◎「希望の灯り」を修復
 大学生の破損事件で


 神戸市中央区・東遊園地にある阪神大震災の慰霊モニュメント「1・17希望の灯り」の一部が5月2日深夜(3日未明)に市内の大学生に壊された事件で、17日に灯りの修復式が行われた。事件を受けて、モニュメントを捉えなおす動きも生まれている。【5月17日 UNN】

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市民らの手で「希望の灯り」に新しいガラスがはめ込まれた
 2日に破損したのは希望の灯りのガス灯を囲むガラス部分。大学生はコンパの帰りで酒に酔っており、立ち寄った同遊園地でガラスに手を付いて灯りをのぞきこんでいたところ、誤って天板部分を壊してしまったという。7日に、大学生当人が灯りを管理するNPO法人「阪神淡路大震災1・17希望の灯り」に壊したことを名乗り出て、弁償の意思も示した。法人の話では、大学生は希望の灯りの存在や設置目的を知らなかった。
 17日の修復式には震災の遺族やNPO法人関係者ら約20人が参加。初めに大学生から寄せられた謝罪文が読み上げられた(下部に全文を掲載)。文では「不注意と、あの場所に対する理解がまるでなかった」ことが原因としており、大学生と会ったNPO法人関係者によると、深い反省の態度を見せているという。
 その後、集まった人々が新しいガラスの天板が設置。修復用のガラスについては大学生から弁償の申し出があったが、事件後に市民らから寄せられた寄付金約6万円でまかなった。

◎震災活動捉えなおしへ

 今回の事件は、「1・17希望の灯り」の活動に改めて問題を提起するきっかけにもなった。「(希望の灯りを)大学生世代を含めて語り継いでいくツールの一つとして作ったけど、(その気持ちが)届ききっていないと認識した」と、同法人代表の堀内正美さん。地域の人々にもまだ十分には認知されていない現状を再確認した。
 これを受けて同法人や神戸市は、モニュメントの設置趣旨を説明する看板や、市内の地図や道路標識などに場所を示すなど、希望の灯りの認知度をあげる工夫を計画中。17日の修復式の後にも、市役所内で地域の人たちを交えた話し合いがもたれた。 堀内さんは「ガラスたった一枚でこのことに気づけたんだから、(今回の事件は)むしろいいきっかけになった」と前向きに話す。
 また、震災当時に神戸大生だった子供を亡くし、現在は同法人の理事長を努める白木利周さんは「(大学生が)勇気をもって言ってくれたことが嬉しかった。そういった出会いも大切にしていきたい」と話した。亡くなった命と人々をつなぐという趣旨のもと、希望の灯りをともし続けるための試行錯誤が続いている。

●大学生の謝罪文
 始めに、「1・17希望の灯り」のガラスケースを割ってしまった事を深くお詫び申し上げます。わたしの不注意と、あの場所に対する理解がまるでなかったことが、今回の一件が起きた理由だと思います。今回破損のニュースが報道された時、初めてあの場所が震災後にできた事を知りました。大学の仲間とインターネットで調べ、「1・17希望の灯り」は、被災地に数多くある慰霊碑、追悼碑、モニュメントを巡り歩く活動に携わったご遺族やボランティアの方々が中心になって建てられたもので、震災で亡くなった方々への慰霊と生き残った方々が復興へ向けて力を合わせていこうという趣旨のもと、47都道府県と被災10市10町から種火が寄せられ燈されたものだということも知りました。隣に立つ建物の地下には、震災で亡くなられた方々のお名前が掲示されていることも知りました。
 わたしは阪神淡路大震災の時、中学1年生でした。自宅が郊外にあるので、その時揺れで怖かったことは覚えていますが、その後震災のことは考えることもありませんでした。
 今回の出来事を通じて、震災で私と同じ歳の息子さんを亡くされたご遺族とはじめてお会いしました。これまで私が想像していた以上の苦しみを味わっていることを知りました。ほかのご遺族の中には、こういった苦しみを引きずり続けている方々も数多くいるのではないかと思います。そういった方々の苦しみを分かち合うためにも、今後できる事があればやっていこうと思いました。最後に、「1・17希望の灯り」修復に募金して下さった方々、東遊園地まで足を運んでくださった方々へ感謝の気持ちでいっぱいです。大変お世話になりました。




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