緊急連載 大学から震災の灯は消えたか 第9回
報道への疑問乗り越え 学生記者が見つめ続けた震災 UNNの震災報道<中> |
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学生時代は、関学の学内紙「関学新月Tribune」の記者で、震災特集の取材に1年生の時からかり出された。 1996年に入学。堺市の実家から通う大学周辺の西宮にはあちこちに更地が残っていて、震災の傷跡が、まだなまなましかった。 「人の命を感じる取材は、初めてでした」と振り返る。 ○ ○
現在、UNN関西学生報道連盟に加盟する学生新聞は10紙ある。1996年の震災1年後の追悼手記の特集は「神戸大NEWS NET」紙が単独で組んだ。 その翌年からは、被災地にある「関学新月Tribune」紙、「神戸女学院大学K.C.Press」紙のスタッフも加わり、3紙共同で1月号に震災特集を組むようになった。 97年1月号の特集のテーマは、矢木さんが取材に加わった「震災から2年 被災下宿は今」(4ページ)。 神戸大、関学であわせて54人の学生たちが亡くなった。彼らの最期の場所となった下宿跡を訪ねるルポだ。亡くなった学生を記憶にとどめるとともに、2年の間に下宿街がどこまで復興しつつあるのかを描こうというものだった。 取材を断られたり、怒鳴られることもたびたび。話してくれる人もぽつぽつだった。 「しんどかった」と矢木さんはいう。 翌98年は「震災から3年 いま、後輩たちに伝えたいこと」(4ページ)を特集。95年の震災当時1年生だった学生がこの春に卒業するのを前に、学生として被災した体験を記録にとどめようと、3大学で先輩たちにインタビューをした。 そして、99年からは、加盟全紙の共同編集に発展。タイトルは、震災の記録を写真で残す「大学から1999−震災発生から現在までの記録」。震災直後のキャンパスの様子や、震災を語り継ぐ人たちの写真が、見開きでレイアウトされ、9大学の紙面に一斉に掲載された。 紙面だけでなく、三宮、神戸大、関学、神女院大で巡回写真展を開いた。三宮フェニックスプラザでは、一般の市民も訪れた。 「震災当時の神戸と今を比較し、違いを伝えたかった」と言う。写真展の反響は大きかった。1000人を超える写真展への感想が寄せられた。中には、「もっと震災を伝えてほしい」と激励の言葉もあった。 この企画を提案したのも矢木さんだった。3年生になってカメラマンを志しはじめていた。映像で記録する事にこだわりたかった。 「一般の新聞社など、他のメディアで伝えられていない事実もある。学生しか気づかないことが伝えられた」と矢木さんは話す。「東京で働いていても、震災をずっと見つめていきたい」。 ○ ○
震災から5年。2000年の特集は、記者10人程の大きな体制を組んだ。「被災学生5年目の追悼手記『亡くなった31大学111人へ』」(8ページ)。加盟大学から枠を広げ、震災で亡くなったすべての大学生の記録を残そうという取り組みだった。 各大学の事務局に頼み込んで遺族に手紙を出したけれど、返信はなかなかこなかった。電話取材をすることになって、議論が噴出した。 取材班キャップだった栃谷亜紀子さん(24=当時・神戸大3年)は言う。「そこまでして取材する意味があるのか。遺族の心の傷を広げることになるのではないかと言う後輩もいた」。 震災報道に疑問を持つ後輩にたいして、「とりあえず、やってみなさい」と取材に向かわせた。 栃谷さん自身、最初は「震災を体験していない自分が、遺族の気持ちを伝えるなんて、おこがましいのではないか」と思った。 しかし取材するうちに「話を聞いてほしい、記録を残してほしい」という気持ちを持つ遺族がいることを知った。「取材活動を通して、何より自分自身が震災に対して無関心であってはいけないと思った」と栃谷さんは言う。 追悼手記は、テレビ、新聞、インターネットとさまざまな媒体を通じて、紹介された。神戸以外の地域からも、たくさんの「声」がよせられた。 遠く新潟県在住の男性からも、「2000年はじめに、勇気の出るプレゼントをもらった」とのお便りがあった。 ○ ○
01年には、再び3紙共同編集に戻った。「震災から6年 覚えていますかあの日のことを」(1ページ)。02年は「震災7年目の学生達」(1ページ)。 特集紙面としては小粒になったと、ある連盟OBはいう。「それまでの、記録性や網羅性のあるルポから、手近な体験者へのインタビューものになった」と分析する。96年の最初の特集は、12面を使って行った。 「被災体験のない学生達の手で、しかしよくここまで続いてきた」(同)という震災特集だったが、03年の編集で、ある事件がおきた。【震災取材班 福田公則】 この連載へのご意見、ご感想はinfo@unn-news.comまでお願いします。 |
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