緊急連載 大学から震災の灯は消えたか 第11回

取材続けることに疑問も
被災地の学生新聞
 
震災関連の記事を掲載している神戸大学新聞(右)と、関西学院大学新聞
 阪神淡路大震災後、被災地の学生新聞はキャンパスからそれぞれの報道を開始した。犠牲者が多かった神戸大や関学の学生新聞は、被災者の日常に密着した生活情報や、大学の動きを発信。独自の視点から震災を伝えてきたが、現在は震災関連のニュースは少なくなった。神戸大と関学の学生新聞の活動を振り返る。

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 「関東大震災以来最大級、と形容される『阪神大震災』のあの夜から1週間が経ちました」(95年1月25日発行『神戸大学新聞号外』冒頭)。
 阪神大震災で学生39人の犠牲を出した神戸大。100年近く学内新聞を発行してきた「神戸大学新聞会」は、現在は基本的に年10回、1000部ずつの新聞を発行している。震災が起こった95年には、被災後1週間で号外を作りはじめた。
 「神戸大学生協情報 <物資届けます>」、「学生注目!寮で学生を緊急受け入れ」、「神大生有志によるボランティア活動」…。
 2月21日までに6本の震災関連号外を作成。大学や下宿の状況を伝えるとともに、援助や物資の情報など、被災者の日々の生活に密着したニュースを発信した。「(被災者にとって)本当に必要な情報を」が、基本姿勢だった。

 その後の新聞会の震災報道は、各年度ごとに編集員たちが独自に活動を展開してきた。97年は震災関連のニュースを扱わなかったが、翌年は被災地ボランティアのルポを掲載。99年には学生に意識調査を実施した。
 ルポやアンケートを担当した田治宏敬さん(26、経済学部卒)は、「(辛い体験の)フィルムの焼き直しではなく、今後の役に立つ情報を出したかった」と話す。

 独自の視点で震災を報道してきた神戸大学新聞だが、02年からは再び関係記事を掲載しなくなった。
 「(震災を)知らない人間が被災者に取材をしていくことに疑問を感じる」。現在、編集長を務める山脇伸哉さん(神戸大・3年)は、今の編集部メンバーを眺めてそう感じている。震災で特に大きな被害を受けていない人ばかり。「自分たちは被災者と同じような意識を持てない」との思いが強い。
 では、震災報道についてはどう考えているか。「忘れないためとか、伝える意味はあると思う。でも、自分たちが中途半端に震災を伝えるのは、被災者に対しておこがましいのではないか」。
 ただ、あくまで現役部員の意志を尊重するのが新聞会の方針。来年以降、希望があれば震災特集再開も考えられるという。山脇編集長は「後輩たちのためにも、この大学で震災があったという意識だけは残していきたい」と話している。

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 「関西学院大学新聞」は今年で81年目を迎える新聞。年6回6000部をカラーで発行している。震災のことを初めて掲載したのは95年の4月号だった。8面のうち3面を震災特集に割いている。2面には関学の動きを検証した「その時大学と学生は−阪神大震災を振り返る−」と題した特集、4面と5面には「頑張る学生ボランティア」という関学生がボランティアに励む様子が特集されている。

 その学年によって震災の取材をするかどうかを決めるので、毎年掲載しているわけではないが、学生に関心を持ってもらおうと、関学生向けに情報を発信してきた。96年はヒューマンサービスセンターの特集、02年は「K.G. OB&OGジャズナイト1・17」のチャリティーコンサートを掲載した。

 今年、関学新聞では学内の震災犠牲者追悼の意味を込めたハクモクレンの植樹を取り上げた。ハクモクレン植樹の記事を取材し執筆した古本直寛さん(関学・2年)は「震災だからというのではなく、(普通の)ネタの一つとして取材した」という。
 ハクモクレンの植樹のとき、報道陣は目立ったが対照的に学生は少なかった。「学生はあまり震災に興味を持っていないのではないか」と疑問を感じた。

 しかし、17日の震災の合同礼拝に参加すると、多くの学生が集まっていた。この様子を見て震災に学生が興味を持っていないことはないと実感。古本さんは「(ハクモクレンの記事のような)ただ単に事実を書き並べたものではなく、違うかたちで表現したい。そうでないと読者も読んでくれないと思う」と来年は特集を組むと意気込んでいる。

 また、総部長の柴田耕一郎さん(関学・3年)は、「(震災は)風化させてはいけない」と話す。学生の視点から見た報道をし、読者をとりこんでいくのが関学新聞のモットー。震災の取材は「後輩にもぜひ続けてほしい」と思っている。【震災取材班 岩崎昂志、植中喬光】

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