あの日から21年 語り継ぐ震災

神戸大で慰霊式

「あいつともっと遊びたかった」坂本秀夫さん

2016年1月16日配信 記者=坂本知奈美

慰霊式に参列した坂本秀夫さん(撮影=竹内勇人)

 「おととしまで(遺族は)2倍以上いた。みんな歳いったんかな」と2年ぶりに神戸大の慰霊式を訪れた坂本秀夫さんはつぶやいた。坂本さんは息子の竜一さん=当時(工・3年)=を阪神・淡路大震災で亡くした。親子というよりは友人に近い、カラオケも一緒に行くほど仲良しの息子だった。

 震災直前の16日には竜一さんが希望した焼き肉を一緒に食べたという。その後、六甲へ帰る竜一さんを駅まで送って行った。「泊まっていけ、と言えば良かった……。今思うと最後の晩餐(ばんさん)、好きなものを食べられて良かったのかもしれない」。

 21年という時間は少しずつ坂本さんの気持ちに変化をもたらした。震災から数年間は「なんでや」という悔しい思いが強く、精神的に辛い日々が続いた。だが、70歳を超え「だんだんあいつのところに近づいてきた。僕はあいつともっと遊びたかったから、死んだらあいつに会える」と考えるようになり、落ち着いたという。

 しかし、震災に対する後悔の念を、拭い去ることができたわけではない。震災の前日夕方に起こった最大震度1の地震を気のせいと片付けてしまったことも、まだ心にしこりを残している。竜一さんはほぼ全壊した学生アパート・西尾荘の下敷きになり、抜け出せないまま迫ってきた火によって命を絶たれた。坂本さんは、「(震災は)思いだしたら嫌。火さえなければ死んでいなかった。命まで落とすことはなかった」と語る。

 21回目の17日は竜一さんの眠る墓に向かう予定だ。「あと10年はここ(神戸大慰霊式)に来たい」と坂本さんは話した。

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