あの日から21年 語り継ぐ震災

遺族の1.17

「息子、見守ってくれている」戸梶道夫さん父

2016年1月18日配信 記者=坂本知奈美

 神戸大に入学し、バトミントン部で技を磨いていた戸梶道夫さん=当時(営・2年)=は震災によって突然、帰らぬ人となった。震災後、戸梶さんの実家では毎年、高校時代の野球部や大学のバドミントン部の同期による同期会が開かれているという。

 震災が、新たな交流を生んでいる。21年が経ち、同期らは当時20歳だった道夫さんの、倍の年齢になり、それぞれの道を歩いている。父・幸夫さんは「最初のほうはクラブの合宿のビデオを流して当時を振り返ることもあったが、最近では(同期の人たちの)近況報告が中心」だという。母・栄子さんは、神大の慰霊祭や1月17日の献花を「(遺族は)みんな同じ思いだから、会えるのがうれしい」と話す。献花の際に他の遺族と会うと、互いの近況報告に花が咲いた。

 21年という年月が経過し震災について話す機会は少ないが、1月17日が近づくと近所の人から花をもらうこともある。「21年たってもそういうことをしてくれるのはありがたい」と幸夫さん。だが、今でも道夫さんが震災で亡くなったことを忘れられない苦しい気持ちもある。昨年、会社を辞めて暇になったこともあり、「息子が今も生きていたらどうなるんだろう」ということを考えることは増えたという。

 そんな中、新たな一歩として栄子さんは「バトミントンもすごい頑張るあの子(道夫さん)に負けないように」と4年前、63歳でテニスを始めた。「あの子は一生懸命。あの子がいたら頑張るやろうなと思って、私も頑張っています」と笑う。「(道夫さんは)ずっと見守ってくれてる。そばに居てくれる、頼りになる子」と最愛の息子に神戸大から思いを馳せた。

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