篠塚 真さん
昭和48年9月18日生まれ
当 時:神戸大・理学部2年
被災地:神戸市灘区桜ヶ丘6ー10 大日荘1階37号
出身高校:愛媛県立宇和島東高校
写真:右端
執筆:由紀子さん(母)

 

「下宿変わりたい」
と言っていたのに…

 あの日から五年の歳月がたとうとしています。冷たい風が吹き始めると、一層子供達のことが身にしみます。これからという子供の未来をもぎとった悪夢のあの日、何度も何度も電話をかけても通じず長い長い一日でした。午後二時過ぎ芝さんから下宿が倒壊し六甲病院へ収容したと連絡がありました。唯々命あることを願って神戸へ向かいました。
 翌朝七時ごろ六甲病院へたどり着きました。見覚えのある私の持たせた布団に寝ていました。真ちゃん真ちゃん肩を抱き揺すっても揺すっても目を覚ましてはくれませんでした。なす術もなくただとり乱してしまいました。検案を待つ間、暗闇の中でたった一人で旅立ったかと思いますと不憫で不憫で一緒に寝て待ちました。穏やかな顔をしていました。それだけが救いでした。きっと眠ったまま天に召されて逝ったのでしょう。圧死ということでした。彼は平成四年現役で二つの国立大に合格しましたが、それでは納得がいかず神戸大に夢をかけました。翌年努力のかいあって、東京理科大と神戸大に合格し大変喜びました。
 もちろん神戸大を選びました。下宿は木造二階建ての古い住宅でした。大学にも近く通うにはよいところでしたが前々から下宿を変わりたいと言っていたので残念無念でなりません。幼いときからすばらしい、たのしみな成長をしてくれました。もっともっと勉学をしたかったことでしょう。無念だったことでしょう。
 


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