藤原信宏さん
昭和47年9月5日生まれ
当 時:神戸大・経営学部4年・森ゼミ
被災地:神戸市東灘区御影石町4ー19ー12 上原方
出身高校:三重県立津高高校
執筆:藤原宏美さん(父)

 

信宏も今頃は仕事は、
結婚は・・・

 先月末に甥が結婚しました。信宏には二人の同年の従兄弟がおり、そのうちの一人です。式は現代風で友人の司会による明るく楽しいものでしたが、披露宴の中頃からの大学や職場の仲間による祝辞やエピソード披露などを聞いているうちに段々、雰囲気に溶け込めなくなっていきました。信宏も同年、今頃は、仕事は、結婚は・・・と考えてしまったからです。帰りの車の中で妻がポツリと「家には縁のない話」といい、あとは沈黙の世界でした。
 今月、母の二十七回忌の法要を営みましたが、その時のご住職の話しです。檀家の一人住まいの老人が孤独死、その方の子供は娘一人で既に他家に嫁いでいたため、葬儀をどこで行うかでもめ、結局、通夜は嫁ぎ先で告別式は寺で、後の法要も寺主体でということになったそうです。ご住職に他意はなく私達も何気なく聞いていたのですが、我家も一人娘、同じ状態である訳です。今ある三つの位牌は、私達のことは・・・と考えてしまいました。
 あれから五年、何が変ったか。こうしたことが気になるようになりました。心身の衰えだけは確実です。仏壇の写真は年をとらず生前の優しさのままに微笑んでおり、写真に向っての「何故?」との問い掛けと謝罪、愚痴も以前と変りませんが、近頃は愚痴の方が増えてきているような気がします。
 どこまで追い掛けても仕方のないこと、気持ちを整理し今後に向けての何かを見つけるべきですが、五年を経てもそうした状態には至っておりません。ただ、目的を持ち二十二年間をひたむきに生きた信宏に恥じることのないようにはしなければと思っています。
 


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