未来へ継ぐ
竸基弘賞に千葉工大・吉田氏 災害現場調べるロボット開発
2016年1月13日 記者=瀧本善斗
【写真】第12回竸基弘賞の授賞式で、受賞のあいさつをする千葉工業大の吉田智章主席研究員(11日 撮影=瀧本善斗)
災害現場で役立つ技術の研究者らを表彰する「第12回竸(きそい)基弘賞」の授賞式が11日、神戸市立地域人材支援センター(長田区)で行われた。ロボット技術を専攻し、阪神・淡路大震災で亡くなった竸基弘さん=当時(旧自然科学研究科・博士前期)=の名を冠した賞。今年は学術業績賞に、千葉工業大未来ロボット技術研究センターの吉田智章主席研究員が選ばれた。技術業績賞は該当なしだった。
竸基弘賞は「ドラえもんのような人の役に立つロボットを作りたい」という竸さんの遺志を継ぎ、2005年から毎年、神戸市のNPO法人「国際レスキューシステム研究機構」が開催。審査委員長は、同機構副会長で竸さんの指導教員だった松野文俊京都大教授が務めている。
吉田研究員は、無限軌道を装着したクローラー型ロボットの開発に関わってきた。人間が近づけない災害現場に入り、カメラやセンサーなどで内部の状況を調べることができる。東京電力福島第1原発の建屋や、熊本地震で被災した熊本県宇土市役所で実際に被害調査に使われている。
講演で吉田研究員は自身の研究の経緯を説明。実際の現場で想定外の事態に直面した経験を語り「(現場で)やってみて初めて気付くこともある」と話した。また以前は、研究が必ずしも現場で役立つ必要性を感じていなかったといい、「レスキューロボットに関わるようになってから、現場で使う人や使った結果に意識を置くようになった」と取材に答えた。
松野教授は閉式の挨拶で、震災当時、教え子の死を前にエンジニアとして何もできなかった後悔を口に。受賞者に「竸君は夢を持っていた。今回の(受賞の)経験を元に、何らかの形でレスキューの意識を持って、夢の実現のために一日一日努力してほしい」と呼び掛けた。
他の受賞者は次の通り。
▽レスキュー工学奨励賞=長岡技術科学大大学院生、櫻井伸之介さん▽レスキューロボットコンテスト奨励賞=金沢工業大生のチーム「夢考房」▽ロボカップジュニアIRS賞=福岡県立修猷館高2年の小辻素良(そら)さんと、中村学園三陽高(福岡市)1年の緑川琳久さんの2人組「Aster:(アステール)」
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