野呂太祐さん
当時:関学・経済学部1年 巻下吉夫ゼミ
テニスサークル‘レッドシャポー’
被災地:西宮市上ヶ原5番町 若葉荘
出身高校:三重県立松阪高校
執筆:野呂和美さん(母)
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甥っ子を 見守ってやってね
たいちゃん、見えますか。君の前に来たら、その小さな手を合わせ、腰を二つ折りにし、「あ。うん」と小首を振り、そしてりんを叩き始めるその姿が・・・。
はじめの頃は、りんを叩く棒を口にくわえてベチョベチョにし、線香立ての中に指を突っ込み、そこら中灰だらけにしていたけど、最近は心得たもの、線香やろうそくを慌てて仏壇に乗せる私に、手伝うかのように手渡してくれ、りんと鉦と木魚だけにし、その三つをおもむろに交互に叩き始める姿、その愛らしい姿が、君の幼い日の姿とダブって思わず目頭が潤んでしまいます。
君がそちらの世界へ行ってから、心の底から笑う事が出来なくなった我家族にも、小さな一つの命の誕生が、こんなにも明るく、幸せな気分を運んできてくれました。その命が、君の生れ変わり、とおばあちゃん達は喜んでいます。本当に君の生れ変わりですか?
誰が教えた訳でもないのに、仏間に入る前から手を合わせ、墓地の側を通っただけでも手を合わせる幼子の姿に、鳥肌の立つ程、感じるものがありました。
二度と会えない君のかわりに、君の分までもこの子を慈しんでいます。
もし君が、この子を抱くことができたら、メチャクチャ可愛がっていたでしょうね。だってお目目のたれたところなんか、そっくりだから。
たいちゃん、君の甥っ子悠大を見守ってやって下さいね。
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