薮内康行さん
昭和46年2月18日生まれ
当時:関学・法学部法律学科4年
アーチェリー部
被災地:宝塚市仁川北 甲山荘
出身高校:私立清風高校
執筆:為近旬子さん(姉)

 

代われるものなら
代わりたい


 康行へ
 あれからもうすぐ五年が経とうとしています。そちらは、どうですか。過しやすいですか。
 一月十三日お姉ちゃんに、元気な男の子”浩輝”が生まれたんだよ。そして四日後の十七日に、大地震で康行は、遠い所に旅立ってしまったね。
 私が、生まれたばかりの浩輝を抱いて、生駒の山を越え、奈良の実家に帰る時、同じように康行は、両親に連れられ帰ってきたね。本来なら、家族が一人誕生し、喜びにみちた里帰りのはずだったのに・・・。浩輝の成長を振り返る時、いつもいつも康行のことを思うよ。元気だったらどうしてるかなって。康行の部屋に入るたびに、「なんでいてへんねんやろ。何で帰ってこうへんの。康行おったらなあ・・・。」浩輝を康行の生まれ変わりと思って、といろんな人に言われたけれど、私の弟、康行ではないのよね。あの当時の様に、涙をいっぱい流して泣く事は、少なくなったけど、康行への想いは、五年前と同じだよ。今、涙を流して泣く時は、あの頃よりも、もっと切なくて、虚しくて淋しい気がするな。時が、戻れるものなら、願いが叶うなら、本当に戻ってほしいね。まだまだ、いっぱいやりたい事、夢があっただろうに・・・。代われるものなら、代わってあげたい。私でさえそう思うのに、両親は、どんな思いか・・・。家族の中で、一番元気だった康行が、両親よりも早く、天国に旅立つなんて、こんな親不孝は、ないんだよ。だから、いつもどこかで、二年前に旅立った父とともに、母を見守ってほしい。お姉ちゃんからのお願いです。また逢える日まで。

お姉ちゃんより


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