神戸大学ニュースネット委員会 阪神・淡路大震災から22年 「災後」今も続く
神戸大慰霊式

加藤りつこさん「出会いに助けられた」
2017年1月19日 記者=瀧本善斗

 加藤貴光さん=当時(法・2年)=を亡くした母、りつこさんは神戸大の慰霊式に毎年参列するほか、全国を回り震災について講演している。強調するのは出会いの大切さ。数多くの出会いに助けられたという。

【写真】神戸大震災慰霊献花式に参列した加藤りつこさん(右)と松田殊里さん(17日・六甲台第1キャンパスで 撮影=瀧本善斗)

 震災当初は人と会う気持ちになれなかったという。転機が訪れたのは1995年3月。貴光さんの友人だった当時法学部2年の村上友章さんが、テレビニュースで取り上げられたのを夫がたまたま目にした。被災学生として旧ユーゴスラビアのベオグラードに招かれた村上さんは、貴光さんが亡くなったマンションの崩れた破片を持ち込み、現地の植樹祭で一緒に植えた。

 貴光さんと村上さんは共に国際貢献の仕事を志した仲間。りつこさんは元々村上さんを知らなかったが、報道を受けすぐに調べ、友章さん方と連絡をとった。「それまでずっと人に会いたくなかったのに、途端に会いたいと強く思った。外に出るきっかけになった」

 以来、家族ぐるみの付き合いに。慰霊式にも村上さんの母、栄子さんが参列し、久しぶりの再会に顔をほころばせた。「りつこさんを通して私もいろんな出会いがあった。貴光さんの姿こそないが、一緒に生きている感覚」と話す。

 りつこさんの講演は、震災を経験していない世代にも衝撃を与えた。広島県福山市の盈進高3年、松田殊里(ことり)さんは、中学3年の時に学校で講演を聞いた。貴光さんが国連職員を目指しながら震災で道を閉ざされたと知り「私も頑張らなければ」と感銘を受けた。

 高校では社会問題について調べるヒューマン・ライツ部に入った。活動を通してりつこさんと交流。神戸大の慰霊式には2015年に初めて来て以来、2度目の参列となった。

 「元々神戸にゆかりがなく、また来れると思っていなかったので良かった。りつこさんには『連れてきてくれてありがとうございます』と言いたい」。4月からは大阪の大学に進学する。「経験していないからこそ学んでいかなければならない」と意気込む松田さん。りつこさんがつないだ輪は広がり続ける。

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