コラム伏流水 すれ違う若者の思い

今年の夏、学生の活動を取材するため、大阪の西成は釜ヶ崎周辺を訪れた。釜ヶ崎は日本最大ともいわれる日雇い労働者の町だ。いわば「野宿者の町」である。街を歩くのは浅黒く日焼けした中年男性ばかり。労働者センターの周りには、職にあぶれた人々が所狭しとたむろしている。【12月22日 神戸大NEWS NET=UNN】?

 幾重にもフェンスで囲われた公園にその「村」はあった。通称「テント村」。公園の周囲に多くのテントが群れ、一つのコミュニティを形成している。学生たちはテント村の真ん中で御座の上に座り、菓子をつまみながら、住人から身の上話を聞いた。その様子を眺めていると、隣に男性が腰掛けた。交流会には参加していなかったが、暇つぶしに話しに来てくれたようだった。取留めもないことをしばらく話し、笑顔を交わした。?

 先日世間をにぎわせた、神戸大生による野宿者襲撃動画の騒動。結論からいえば「被害者」は存在しない。しかし、具体的な「被害者」がいない分、余計に思いは遊ぶ。あの人達はこのことを知っているだろうか。知っていたらどう思うだろうか。「野宿者にも人権が」そんな高尚なことは言えない。ただ、思いをはせ、心が痛んだ。

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