海事科学研究科の附属練習船として約35年間活躍し、老朽化のため売却された深江丸が、3月10日(木)午前8時(9日から変更)に深江キャンパスで業者に引き渡される。深江丸は業者によって解体される予定だ。<佐藤ちひろ>
(写真:引き渡しを待つ深江丸。深江キャンパスで。)
深江丸は海事科学研究科の附属練習船として、1987年から約35年間、学生の実習や調査・研究の場として活躍してきた。老朽化のため深江丸は廃船となり、解体して鉄くずにするという条件で蝶土里トレーディングに売却された。
今回、ニュースネットは深江丸にゆかりのある教員や船員に話を聞いた。
神戸商船大卒の林美鶴准教授は、「学生の頃は実習で、教員になってからは海洋観測のための研究航海で深江丸に乗っていた。深江丸にはお世話になった。」と語る。
現在の深江丸が造船された当初から34年間乗船していた(最終航海は2021年11月17日)一等航海士の青山克己さんは「深江丸は後ろの追い波に弱く、よく物が飛んだりテーブルがひっくり返ったりしていた。思い出はありすぎて困るくらいある。」と語る。
(写真:右から、司厨部の小原一彦さん、船長の矢野吉治さん、一等航海士の青山克己さん、二等航海士の松井将揮さん)
また、1997年から2022年まで25年間深江丸の船長を務めた矢野吉治教授は、深江丸初の専属船長を務めた。深江丸は主に研究や実習で利用され、深江祭では一般市民も乗船することができた。矢野船長は、「船上では途中で実験を中止することはできない。安全第一。陸上での実験とは全然違う」と話す。船長は船上で大きな権限を持つ一方、責任も重大だ。2004年8月の航海では、最大風速61mの台風16号に襲われた。海上で停泊しようとするも錨が何度も外れてしまい、2時間ほどかかって、ようやく停泊することができたという。船長は、「一番身の危険を感じた瞬間」だと語る。
一方で、深江丸には楽しい思い出もたくさんあるという。トカラ列島を通過した際は、海一面でイルカが水族館から逃げ出してきたかと思うほど高く飛びはねていたそう。また、「料理がおいしく、毎回楽しみだった。実習で乗船する学生も大喜びだった」と矢野船長は話す。料理を担当した司厨部の小原一彦さんはフレンチシェフで、船上では加工食品を使用せず、小原さんが一から作った料理が食べられたという。
深江丸への思いを聞くと、「長い間お疲れ様という気持ち。今まで船は20年で新しいものに交換されてきたが、財政的な厳しさもあり、深江丸は延命措置を繰り返すことで35年間使われてきた」と話した。
教授である矢野船長は今年度の3月末で定年を迎える。3月14日(月)には深江キャンパス梅木Yホールで最終講義「海技者教育この38年」が行われる。
廃船後は、深江丸に変わり「海神丸」が運航することになっている。
▽「ありがとう深江丸」神戸大公式YouTubeより=https://youtu.be/VSfixVeCzkg
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【お断り】3月9日に引き渡しの予定でしたが、天候の関係で3月10日午前8時に変更になりました。
了
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