6月下旬から六甲台第2キャンパスに出没していたウリ坊集団5匹。7月20日午後、神戸市によって捕獲されたウリ坊は、その後の取材で2匹だったことがわかった。殺処分されたという。1匹はジャンプして逃走。現場にいなかった2匹とあわせて、計3匹の行方はわかっていない。ウリ坊たちを見守っていた人は、都会の野生動物と人間とはどう共存すれば良いのか「関心を持ってほしい」と訴えている。<佐藤ちひろ>
●1匹はジャンプして捕獲を逃れて雑木林に
担当の神戸市農政計画課によると、7月20日午後、市職員と地元猟友会員がウリ坊の捕獲のために現地を訪れた際に確認できたのは、貯水池内の3匹だけ。猟友会が捕獲しようとすると1匹はジャンプして貯水池から脱出し、急斜面の雑木林に逃げていったという。猟友会は2匹のウリ坊のみを捕獲した。
2匹は県の決まりに基づき、殺処分したという。
その後、コンクリート堤の上にいた2匹と、貯水池から脱出した1匹のあわせて3匹の行方はつかめていない。
(動画下:貯水池の中にいた3匹のウリ坊。この動画撮影の翌日に、このうちの2匹が捕獲され、殺処分されたとみられる。1匹はジャンプして貯水池から脱出した。<音声なし> 2021年7月19日午後撮影。藤澤貴和子さん提供)
●6月下旬から目撃されていたウリ坊集団は5匹
6月下旬から馬術部の馬場や通学歩道の「うりぼーロード」付近の側溝で目撃されていた5匹のウリ坊たち。
7月16日の午前10時前には、工学部C1棟1階の廊下を1匹が疾走している姿がスマホで撮影されツイッターにアップされた動画(SHIMANAMI Ryo @shimanamiryo )が13万回余り再生されて注目された。このウリ坊が5匹のうちの1匹なのかどうかはわからない。
専門家によると、イノシシの子=ウリ坊はふつう母親とともに生活するという。今回目撃されているウリ坊は、母親とはぐれたのか、周囲に親イノシシの姿は目撃されていない。
その後、7月19日ごろには、工学部食堂から百年記念館に向かう道沿いのコンクリート製の約5メートル四方の小さな調節池で、5匹のウリ坊グループが大学職員らによって確認されていた。
現場は、大学キャンパスとその下の市街地のあいだの急斜面の崖上にあたる。
記者が7月20日の帰路に通りかかった際は、2匹はコンクリート堤の上で寝ころび、残り3匹は調節池の内側で、ブヒブヒいいながら水をパシャパシャはねていた。
一方、神戸市の鳥獣相談ダイヤルに市民からウリ坊についての通報があり、7月19日には市役所職員が現場を視察しているのが大学関係者に目撃されていた。
(写真:市街地から見た、六甲台第2キャンパス。左のガラス張りの平たい建物が百年記念館。右側の茶色いビルが工学部棟。その間に、ウリ坊5匹が目撃された貯水池がある。捕獲を逃れた3匹は、緑が茂った急斜面の雑木林に逃げ込んだものと思われる。資料写真)
●イノシシに指を食いちぎられる重傷事故も
1995年の阪神淡路大震災直後に、神戸市内の避難所で母イノシシが残飯をもらう光景があちらこちらで見られた。この頃から生息区域が、市街地に広がるようになったという指摘もある。神戸市民は、近年、野良犬には会わないが、野生イノシシに出会う確率の方が高い。
一方で、イノシシによる“人身事故”も起きるようになった。
2014年6月には、東灘区で男性がイノシシにかまれ、衣服を破られるなど、3日続けて被害が出た。
2018年12月には芦屋市と東灘区の市境付近で、86歳の女性が左手の薬指を食いちぎられる重傷を負っている。
2018年5月10日夜には、神戸市東灘区本山北町の阪急神戸線岡本-芦屋川間の踏切付近でイノシシ2頭をはね、上下計5本が運休する事故も。
2016年には群馬県桐生市で死亡事故も発生している。
●神戸市の徹底的な捕獲作戦 被害件数は急減
本来、鳥獣保護法で保護されている野生のイノシシだが、農作物や人に危害を与える恐れのある場合、神戸市では「有害鳥獣」として駆除できる。
市によると、行政の手続き上、捕獲されたイノシシは殺処分になるという。
神戸市内でのイノシシによる人身被害は2014年に37件と急増。2016年度と17年度の兵庫県内の被害は、全国ワーストを記録した。
2021年4月2日付の神戸新聞によると、市は猟友会と連携し、わなによる積極的な捕獲を進め、2017、18年度の実績は千頭を超え、反比例するように被害件数が減少。18年度以降は1桁で推移し、20年度も東灘区の2件にとどまった、と伝えている。(神戸新聞2021年4月2日付「神戸のイノシシ被害激減 20年度は2件のみ、ピーク時の5%に」https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202104/0014206002.shtml)
神戸市の徹底したイノシシ対策は、目に見えて効果を上げていることがわかる。
(画像:神戸大のキャラクターにもなっている「うりぼー」。ウリ坊は愛されキャラだが…。「うりぼーポータル」のスクリーンショット。)
●殺処分「悲しい」 人間とどう共存できるのか
イノシシの数は年々減ってきていると神戸大周辺でも話題になっているという。
今回、ウリ坊たちの行方を見守っていたある人は、「もともと人間が(イノシシの暮らす六甲の山を)開発してきたわけだし、できれば殺処分ではなく深い山などに逃がす方法はなかったのか。悲しい」とこぼす。
イノシシの子どものウリ坊は愛らしいイラストに描かれ、神戸大学の公式キャラクター「うりぼー」として採用されている。大学生協でぬいぐるみが販売されたり、ポータルサイトの名前になったりしている。
「かわいい」というまなざしだけでなく、都市部で野生の動物と人間はどう共存すれば良いのか。「今回の問題について、みんなに関心を持ってもらいたい」と話してくれた。
●残る3匹のウリ坊の行方は?
餌がない、雨の日に側溝で溺れるなど、野生の動物にとって生きていく環境は厳しい。子どものウリ坊が5匹くらいいても、その中から成獣になるのは1匹いるかどうかという状況だという。
神戸市は2002年にイノシシ条例を制定。被害の相次いだ2014年に改正し、市民が「餌付け」をする行為も禁止して、命令に従わない場合は公表するなど、イノシシ包囲網は強化されている。
3匹のウリ坊は猛暑の中、キャンパス周辺をさまよっているのか、市街地に降りたのか。行方は、その後つかめていない。
▼関連記事 7月26日「ウリ坊たち捕獲されていた 六2キャンパス南の貯水池で」=https://blog.goo.ne.jp/kobe_u_media/e/52de38b2ccacaad9d4c571b9883a8275
▼関連記事 7月22日「校舎を疾走するウリ坊 危険な親イノシシはどこに?」=https://blog.goo.ne.jp/kobe_u_media/e/b5f2b2e5cda85de028f26e37362be7b8
了
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