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地震防災をテーマにした神奈川県立西湘高校の《調べ学習》Part2




1)地震への心構え もいちどチェック!


やるべきことは、やっておこう

地震がくる前に、やるべきことは、やっておこう。「なんじゃこの揺れは?」「あぁ、とうとう来たんだ……」と、そのとき悔やまないために。(担当=田中沙耶)

Photo  ■非常用持ち出し袋をつくっておこう
 ■飲み水を確保しておこう
 ■家具の配置を工夫し、転倒防止策をしておこう
 ■家の周囲の安全対策も忘れずに
 ■家族の避難場所を決めておこう
 ■近所の防災備蓄庫がどこにあるか知っておこう

【イラスト右】神奈川県総合防災センター『我が家の防災手帳』から。



《非常用持ち出し袋をつくっておこう》

Photo  非常用持ち出し袋は、いざというときに持ち出せる防災の必需品。つめるのは、リュックやナップザックが両手がふさがらず避難に便利だ。履き古したスニーカーもいっしょにいれておこう。玄関が倒壊して、ベランダから脱出することだってあるからだ。
 神奈川県総合防災センターでは、被災後とりあえず持ち出す「一次持ち出し品」と、災害復旧まで数日間、自活するための「二次持ち出し品」の二段階の非常用持ち出し袋をつくることを勧めている。




▽一次持ち出し品

被災後とりあえず持ち出す「一次持ち出し品」。重さの目安は男性で15キログラム、女性なら10キログラム程度がベター(神奈川県総合防災センター)。欲張りすぎると、行動範囲が狭まるゾ。
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【イラスト上】神奈川県総合防災センター『我が家の防災手帳』から。


▽二次持ち出し品

災害復旧まで数日間、自活するための「二次持ち出し品」。最低でも3日分、できれば5日分用意したい(神奈川県総合防災センター)。
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【イラスト上】神奈川県総合防災センター『我が家の防災手帳』から。


▽さらに長期化した場合の持ち出し品

避難生活がさらに長引いた場合にあると便利なものとして、以下のようなものを神奈川県総合防災センターはリストアップしている。そういえば、阪神大震災を経験した神戸市民のアンケートの中に、「本」や「ゲーム」をあげた人がいた。避難所でなにもすることがない時の苦痛は、堪え難いものだったという。文庫本や携帯ゲームで気をまぎらわせることは、ストレスをためないよい方法だったのだそうだ。有珠山噴火のときは、学校の先生が避難所の生徒たちに漫画本などを配るのをテレビでみたことがある。
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・なべ(コッヘル)
・携帯トイレ
・使い捨てカイロ
・裁縫セット
・雨具
・ガムテープ
 (荷物の整理、ガラスの補修、止血など用途は拾い。紙製より布製が丈夫で使いやすい)
・地図(方位磁石があるとなおよい)
・さらし(包帯、おしめ、手ぬぐい、ロープがわり、ふろしきなどに使えて便利)
・筆記用具(油性ペンなど)
・文庫本
子供がいる場合は
・教科書、ノート
・おもちゃなど

【イラスト上】神奈川県総合防災センター『我が家の防災手帳』から。


プラスα情報
▽赤ちゃんがいる場合
 粉ミルク、ほ乳ビン、紙おむつ、おぶいひも、などが必要。離乳食が必要な赤ちゃんも。
▽お年寄り、病人
 補聴器や常備薬、柔らかいたべものの非常食などその人にあった食事ができるように。
▽近視、老眼の人
 メガネが壊れたり、行方不明になると、日常生活が大変制約される。持ち出し袋には、必ず予備のメガネを。コンタクトの人は、水の供給がストップすると、手が洗えず不衛生になりがち。コンタクトキットの予備とともに、やはり、メガネの予備を!



「非常持ち出し袋」は押入れの中じゃだめ?

 部屋の目につくところに置いてあると邪魔だからつい押入れの中にしまったりして……。でも、NO! 震災で家がつぶれてしまった場合押入れの中にあっては取り出せません。では、具体的にどこにおけばよいか?
 それは出口の近くに置くのが一番良い。また車のトランクや外の物置も効果的です。いずれにしても、1箇所に置くのではなく数箇所に分散して置くことを勧めます。また、懐中電灯は必ず枕元に1本置いておく。
 くれぐれも押入れの中には入れないように!!!


プラスα情報
 学校や会社でも、何日も帰宅できなくなる可能性が高いので、スニーカー、季節に合ったもの(夏なら半袖、冬ならコートなど)、食べ物などをロッカーに入れておくと役に立ちます。

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《飲み水を確保しておこう》

 人間が生きていくためには、水や食料が必要。救援物資がくるまで、最低三日分は水や食料を確保しておこう、というのが、どの防災マニュアルにも書いてある。もちろん、三日以上の備蓄があるにこしたことはないけれど。
 阪神大震災の時には、被災地の周辺では救援物資が比較的早く届いたけど、被災地のまん中では届くのが遅れたという。飲み水は、自衛隊や自治体のタンク車が届けてくれたり、貯水槽の埋められている公園にいったりして、長い列をつくってもらうことになる。でも、トイレや洗濯をするぶんの水は、とても足りない。  川の水をせきとめて、子供用ビニールプールに水をみんなで汲み上げてトイレ用に使った避難所があった。
川で洗濯をする人も多かった。小さな川でも、こんな時に役立つ。
 井戸水を汲み上げている家から水をわけてもらったり、わき水のある場所から水をくんできたりと、地下水もやくにたったという。
 でも、安全性が確かめられない水は、「飲む」のは禁物だ。


災害時に川の水や泥水が「飲み水」に早変わりするって本当?

 本当!ろ過装置を使うと泥水などが飲料水として使えるようになる。雨水とプールの水は塩素剤系の「ろ水機」を使うと飲料水になる。この「ろ水機」は雑菌には効果的だが薬品などはろ過できない。そのため川の水は薬品が混入している可能性があるため飲料水としては使用できない。
 この「ろ水機」は市販されてはいない。小田原市の防災部に保管されていて災害時、避難所となる学校などで使われることになる。


一日1人あたりペットボトル1本の水を確保しておくって本当?

 1人3リットル×3日間の水を確保しておく必要がある。(1人9リットル、4人家族の場合36リットル=灯油のポリタンク2コ分)


家族人数×三日分だと……家の中が飲料水の倉庫みたいになっちゃう!

 この水の分量全てが飲料水でなければというわけではない。トイレ用、洗面用、食器洗い用などには風呂の残り湯などが利用できる。また、レトルト食品を温めるのには泥水などでもよい。

プラスα情報
▽家庭用貯水装置(灯油のポリタンクを2コパイプでつなげて水道につなげておく)も販売されている。
▽災害時井戸水を提供してくれる家もある。(家にプレートが備え付けてある)
▽小田原市では、飲料水兼用耐震性貯水槽を設置している。(下図参照)

・地震などの災害時における断水に備え、飲料水や消防用水などに使用する水をためている。
・平成10年までに飲料水兼用耐震性貯水槽を14基設置。全体の計画では19基を設置する予定です。
・一人一日3リットルとして、100立方メートル貯水槽は1万人の3日分。
 60立方メートル貯水槽は6千7百人の3日分の飲料水が確保されている。
・水道管に接続されているので、常にきれいな水が流れている。
・万一、水道が壊れた場合に水の流出を防止する装置がついているので、貯水槽内の水が確実に確保される。
・電気を使用せず、手動ポンプ等で水をくみ上げ給水できる。(停電になっても安心)
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《家具の配置を工夫し、転倒防止策を》

「タンスが倒れて下敷きになった」「食器棚から割れたガラスが降ってきた」…。阪神大震災では、家具の転倒や落下で死亡したり、負傷する人が続出しました。大きくて重い家具は、ときには凶器に変身することもあります。家具の配置を見直して家の中に安全なスペースをつくるとともに、すべての家具をしっかり固定しておきましょう。

▽家具を購入する場合、奥行きがなく背が高いものは、倒れやすいので避ける。
高さを10とすると、奥行きが4以上あるものは比較的安全!
また石こうボードに取りつける場合、内側の添え木の位置を確かめて、L字金具で取りつける。

▽家具を安全に配置するコツ
家の中に逃げ場としての安全な空間をつくっておく。


家具の転倒防止にかまぼこ板が利用できるって本当?

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右図のように壁に対して斜めに家具を置き、その前方にかまぼこ板を置くと耐震の役目を果たす。しかし、震度7以下に関しては有効だが、それを超える地震の場合は効果なし。耐震装置として有効なのは市販されている家具と天井のあいだのつっかえになる「ふんばるくん」(商品名は各社でいろいろある。写真下を参照)。「ふんばるくん」は、家具の背面よりではなく、前面に近い部分に取り付ける方が効果が有る。天井が弱い薄い板だと効果が小さい。丈夫な天井、「さん」があればその部分に「ふんばるくん」がくるようにする。何よりもL字型家具などで家具を固定しておくことを勧める。

ただし固定できない時は・・・
○壁にピッタリくっつける。
○すべり止めをつける。
○窓ガラスを背にして置かない(家具との間に隙間が生じてしまうため)
○できるだけ板の間に置く。畳のときは、ベニヤ板等を敷く。
○重い物を下に置き、重心を下げる。
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プラスα情報
▽観音開きの食器棚の扉を簡単に固定する方法として、輪ゴムを利用することができる。2つの取っ手に輪ゴムを2〜3本かけて置くだけで、揺れた時に扉が開かなくなる。(イラスト参照)
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《家の周囲の安全対策も忘れずに!》

・ブロック塀や石垣、門柱などをチェックし、老朽化したものや問題がある場合は補強しておく。
 新たにつくるときは、より安全性の高い生け垣やネットフェンスに。
 ブロック塀のチェックポイントは
 高すぎないか? 基礎は十分埋め込まれているか? 控え壁はあるかなど。
・不安定な屋根瓦やアンテナなどは補強する。
・ベランダの植木鉢などは落下しないように固定する。
・プロパンガスのボンベは鎖でしっかり固定する。

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《家族の避難場所を決めておこう》

 昼間の地震だと、家族が学校や会社にでかけてばらばら……。おたがいに連絡が取れない場合もあるので、前もって集まる場所、避難場所を決めておこう。

プラスα情報
 会社や学校といった大きな単位での場合は、安否確認窓口を1つに決めてそこに連絡してもらうようにする。なぜなら、個人個人で連絡をとる(電話)と、混乱してしまうからだ。

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《防災備蓄庫がどこにあるか知っておこう》

 地区の防災備蓄庫の中身などあまり見る機会がないけど、バール・発電機などの災害救助に役立つ備品・非常食・毛布などが入っている。


防災備蓄庫は、カギを持った地区の役員さんがあけてくれる?

A.鍵の管理は自治会役員などが行っていることが多い。しかし、緊急を要する場合、レンガブロックなどで鍵を壊すことも可能になっている。(いざというとき、誰でも開けられるようにしてあるのだ。そうなっていない備蓄庫は、至急改良すべし)


プラスα情報

○警戒宣言とは
 警戒宣言というのは(現在では)東海地震において発令されるもので、“数日のうちに大地震が起こるでしょう!”というものです。

警戒宣言が発令されるまで
・各地に設置されている計器に(ひずみ計等)に異変!!
      ↓
・東海地震判定会が召集!(気象庁長官・大学の教授などの専門家がメンバー)
      ↓危険!と判断されると
・内閣総理大臣へ連絡される。
      ↓発令
・東海地域の住民

 ※気象庁「東海地震とは」を参照。


○警戒宣言の伝達方法
 防災無線、駅の構内放送、百貨店などの電光掲示板でインフォメーションされます。
 他に小田原市では小田原ケーブルTVの行政チャンネルでも随時情報提供します。

○警戒宣言が発令されると……?
 公共の交通機関は全てストップし、銀行・商店もお休みになります。また急傾斜地に住んでいる人々にも避難勧告が出されます。

しかーし!!取材した人たちの話を総合すると、一般的には「発令されないだろう」と言われている。それは警戒宣言を出して空振りだった場合に、経済的・社会的に混乱を招くためそう言われているのである。でも、実際に上記に述べたような観測結果が出た場合になったら発令されるであろう。

取材協力・・・小田原市役所防災部 奥津春夫さん
       東京大学地震研究所強震計観測センター 文部技官 坂上実さん

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次のステップへ



総合学習『もいちどチェックだ! 防災マニュアル』
 0)マニュアルの常識を再点検しよう!!
 1)地震への心構え もいちどチェック
 2)地震直後の行動 もいちどチェック
 3)避難生活サバイバル もいちどチェック
 4)神奈川県地震被害想定調査報告書 概要版

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 ・総合学習『命の大切さ、考えよう』のとりくみ へ
 ・『語り継ぎたい。命の尊さ〜阪神大震災ノート』のホームページ
 ※クリックして、それぞれのステップをごらんください。
 ※あくまで県立西湘高校の生徒たちの調査によるもので、これが防災のすべてではありません。。

●制作 2001年1月17日
  神奈川県立西湘高等学校 防災取材班

  ▽情報提供
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  ご意見、ブックレット著者の授業への派遣などについても
  sinsai@kobe-u.com(HP管理者=神戸大学ニュースネット委員会)までメールでおよせください。担当者に転送します。


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