震災から千日 亡くなった神戸大生の家族が慰霊碑訪問を計画

 十月十二日。震災一千日にあたるこの日に、神戸大の六甲台学舎の慰霊碑に、震災で亡くなった神戸大生の遺族が集まる。【九月二十七日 神戸大NEWS NET=UNN】

 この計画を呼びかけたのは、愛媛県在住の工藤延子さん。一昨年の震災で、当時神戸大法学部院生一年だった長男の純さんを亡くした。東灘区の木造二階建ての下宿は倒壊して、ほぼ即死状態だったという。神戸大では、三十九人の学生が亡くなり、その多くが四国や九州、愛知などから神戸にやってきて下宿していた学生だった。
 工藤さんは、亡くなった学生の家族との交流をミニコミ紙を通して続けてきた。遺体安置所で隣同士だったり、愛媛県出身、純さんと同じクラブ活動だったりという縁でつながった人達に呼びかけて文通の輪が広がり、その家族が、今年の一月十七日、神戸大の慰霊碑に集まったときに、みんなが交流できるものをと、そのミニコミ紙づくりが始まった。題は「THE 17TH」(ザ・セブンティーンス)。新聞には、それぞれの家族の近況や、神戸に行った折の報告、亡くなった子供への気持ちをつづったものなど、工藤さんに寄せられた手紙を転載するかたちで、純さんが使っていたワープロで編集している。今年の二月十七日に第一号が発行され、九月十七日で第八号を迎えた。
 そして、その第四号(五月十七日発行)で工藤さんが新聞を送っている遺族に一千日目となる十月十二日に神戸に集まりませんかという提案をし、いまのところ三家族ほどが呼びかけに応じて集まる予定だという。
 「500日目のときは、いろんなメディアが取り上げていました。でも、1000日目はどうでしょう。誰か数えていて下さるのでしょうか。少し前、篠塚さんからいただいたお手紙に、今日はあれから〇日目と書かれてあり、私と同じだと思ったものでした。……震災を風化させないために、やはり形にして何か残しておきたいといつも思っています。この『THE 17TH』がそのための踏み台になってくれればと思っています。」(八月十七日発行・第七号より)。
 呼びかけに応じて、昨年に一度訪れて以来に神戸を訪れるという戸梶栄子さんは、「とても共感することもあって、思い出すとつらいものもあるんですが、毎月新聞を楽しみにしています。十二日には実家が神戸の桜口なので、桜口を一人で歩いてみようと思っているんです」と話す。
 「THE 17TH」を現在、工藤さんは十四の遺族に送っている。なかには、「もう神戸のことに触れたくない」という夫がいたり、遺族同士の交流に否定的な家族もいるなかで、文通を続けている人もいるという。家族を亡くした心の傷のいやしかたは、夫婦や家族であってもさまざまだ。それでも工藤さんは、「純はワープロを百日しか使っていないんですよ。それで、どうしても純に関わることを打つときはワープロを使おうという気持ちで、とりあえず一年間は続けようと思っています。無理しないでとか大丈夫とか言われて、物理的にはしんどいかも知れませんが、精神的には純と向き合える時間なのでとても充足しているんです」という。十月十二日の午前十時、神戸の港を見下ろす六甲台キャンパスの慰霊碑前には、四国や大阪から家族が訪れる。

関連記事

コメントは利用できません。

月別アーカイブ

本誌誌面PDFアーカイブ

サークル・部活総覧

  1. 神戸大のサークル・部活のツイッター・アカウントを探せるぞっ!クリックすると、『神大PORT…
  2.  神戸大学の文化系のサークル・部活(順不同)をジャンル別にリストアップしました。情報は随…
  3. 神戸大学のスポーツ系のサークル・部活(順不同)をジャンル別にリストアップしました。情報は随…
  4. 神戸大学の医学部のサークル・部活(順不同)をジャンル別にリストアップしました。情報は随時更…
ページ上部へ戻る