関西の大学でも広がる結核

今年七月に神戸大の二年生から、結核菌を含んだ咳をしたり痰を吐いたりする「排菌」の段階まで進んだ結核患者の発生が確認された。
最近、若年者の結核が増えている。関西学生報道連盟の調べでは、神戸大に限らず、近年関西地区の大学に結核がひろがっていことがわかった。
(結核予防会ホームページhttp://www.jata.or.jp/参照)【9月24日 UNN】

大阪、兵庫は「結核ワースト地域」

平成九年度の結核罹患率は、大阪が全国ワーストワン。兵庫は全国二位だ。
結核の症状はかぜに似ていることから病気の発見が遅れたり、周囲も結核に罹ったことのない人がほとんどで免疫が充分でなく、集団発生に発展するケースも出ている。神戸大では毎年のように無症状の人の中から定期健康診断で活動性結核の人が発見されているが、他の大学でも同じように、結核の脅威にさらされている。

同大 毎年20人前後の感染者

同大厚生館保健センターによると、毎年二十人前後の感染者が確認されており、一九九八年度は新規二十人、継続四人の二十四人の感染者がでている。

 現在、大外大に結核患者はいない。過去、留学帰りの学生に排菌段階まで達した結核が(入国の検疫の段階で)発見されたことがあるが、その時は同じゼミに所属していた学生に健康診断を受診させた。保健管理センター所長の太田妙子教授は「せきが何ども続くようであれば、病院などで健康診断を受診して欲しい」と話している。

関学 今年度1人結核と診断

関学は、保健館によると二〇〇〇年定期健康診断で、症状のない学生一人に、胸部レントゲンに異常があることが判明。精密検査で結核と診断、治療を開始した。ただし排菌はなかった。
結核感染の対策として、保健館では、週一回、呼吸器専門医による診察日を設けている。また学内での胸部レントゲンが撮影可能になっている。久保田稔館長は「検診体制の充実をはかり、また、発病時にすみやかな対応ができるようにしている」と話す。

関大 現在5、6人の患者が通院、薬剤投与

関大では、現在五、六人の結核患者がいるが、いずれも感染の危険はなく、通院、薬剤投与をうけている。
関大保健管理センターによると、結核は人から菌を移されてから発症までの潜伏期間が約六カ月あり、その後、咳と三十七度前後の微熱が一カ月以上続き排菌に至る。しかし咳が出ていても風邪の症状とよく似ているので、風邪薬を飲み、少し収まった状態を完治と思い込んで悪化させる人が多いという。

 結核予防については、法律で子供の間にBCG(はんこ注射)を打つことになっているが、大学生になるころにその効力は無くなる。BCGを打つと、「一生安心」と思う学生が多いが、「BCGは子供の間に、結核による髄膜(ずいまく)炎などの併発に対するもので、大人になってからの効力はありません」(関大保健管理センター近藤主任)という。

これまでに阪大、滋賀大、東北大でも感染者

阪大では、一九九七年七月に、男子学生がが自宅で喀血(かっけつ)し、豊中市内の病院で結核と診断されて入院。九月から十月にかけ、この学生と同じクラスなどに所属する別の学生約百人についてツベルクリン検査を実施。その結果、二十一人が陽性反応を示した。
聖マリアンナ医科大学(川崎市宮前区)では、一九九九年九月に、四年生二人が結核に感染し、ツベルクリン反応の検査で学生四十二人に強陽性反応が出ていることが分かった。
滋賀大経済学部(滋賀県彦根市)でも、九九年八月、学部寮の三年生の男子学生が結核を発病し、同大学などの学生計二十七人が集団感染していたことが判明。
東北大では、九二から九三年に大学院生や教官計三人が感染したことや、九七年に医学系研究科の院生から感染者が出たため、九九度から新入生と外部からの大学院進学者に結核検診を行っており、陰性者には予防接種(BCG接種)を実施している。

不摂生、カラオケ、サウナは要注意

大部分の人では免疫の働きが活発となって発病しないが、健康がすぐれなかったり、免疫の力が弱っていたり、菌の増殖力が強い場合には発病する。
大学生の結核発症原因について、関大保健管理センターの近藤主任は「深夜のバイトをしたり、毎日お酒飲んだりする不摂生」を挙げ、感染原因は、カラオケのマイクやサウナでの空気感染などが高いという。

初期なら通院 放置すれば命にかかわる

「現在はすぐれた結核治療薬が開発され、初期の段階であれば殆ど通院で治すことができる。入院ということになっても長期間の療養生活を強いられることも少なくなってきた」という(神戸大保健管理センターHP)。ただ、結核の病変が進展すると、胸膜がおかされたり、血液を介して結核菌が全身に広がる。有効な結核治療薬の無い薬剤耐性菌も近年発見されて、これは命にかかわることがある。
予防の方法としては「とにかく症状が出たら、大学の保健管理センターか、病院に行ってほしい。早ければ一年間の薬の投与で直ります」と関大保健管理センターの近藤主任は話す。

検診は年に一回 発見のチャンス

新たに結核に感染した人の二〇%は集団検診で発見され、七〇~八〇%は自覚症状があって受診した医療機関で発見されている。
近藤さんも、「一番の早期発見は、定期健康診断を受けることです。診断を、体育を受けるためと考えている学生が多いですが、違います。自分の健康のために受けるものなんです」と強調。上級生の受診も必須。「混むため、いやがる人も多いんですが、一年に一回、健康のため我慢してください」と呼びかけている。

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