発達科学部の土井研究室と附属住吉小学校のチームが、このほど「震災と報道」をテーマに総合学習の公開授業を行った。神戸大OBでNHKアナウンサーの住田功一さんが教壇に立ち、五年生の児童たちは、「どうして被災した人たちを助けずにカメラをまわしたのか」といった疑問に自らの経験をもとに応えた。【11月29日 神戸大NEWS NET=UNN】
公開授業は十一月四日に行われた。主催は発達科学部の「震災と防災」カリキュラム研究会。土井捷三教授研究室のメンバーと、附属小学校の教諭がチームを組んで、昨年度から阪神大震災を教育にどう生かすかをテーマに取り組んできた。
報道は命の大切さをどう伝えたか
子供たちのための図書や地質写真のデータペースづくりに続いて、今回は「報道は命の大切さをどう伝えたか~命の大切さから防災を意識しよう~」をテーマに公開授業を行った。
この日までに五年生の児童たちは、羽瀬克彦教諭の指導で、阪神大震災をメディアはどう伝えたかについて、ホームページや新聞縮刷版、ビデオなどで「調べ学習」を重ねてきた。そして、神戸大OBでNHKアナウンサーの住田功一さん(経営・一九八三年卒)を招いて、「どうして被災した人たちを助けずにカメラをまわしたのか」、「人の気持ちをくまずに、伝える場面もあったのでは」とさまざまな疑問や意見をぶつけた。
「どうしてカメラまわしたの」「報道の使命も大切」
これに対して、住田アナは「個人的な意見」と前置きして、「これまでに、いろいろな放送局のマナーの悪い取材もあったかもしれない」としたうえで、「救急や消防の人たちと同じように、学校の先生や区役所の人、電車の運転手さんも、目の前で助けを求めている人に手をさしのべながらも、自分たちの仕事をやりぬく必要があった」、「報道に携わる人たちもその仕事をほうり出したらどうなっていたでしょうか」と 語りかけた。
子供たちからも、「苦しい、辛いということは伝えるべきだ」、「メディアで伝わったからこそ義援金も寄せられた」という意見が出て、理解を深めていった。
次第に震災と向き合えるようになった子供たち
授業の後のシンポジウムで、土井捷三教授は「(生々しい)震災をストレートに子供たちに伝えることより、何か媒介になるものはないかと考え、報道と震災をテーマに選んだ」と説明。
被災地の神戸では、震災の記憶が児童の心に与えた影響がいまだに残っている。参加した兵庫県教育委員会の防災教育担当者は、「PTSDをかかえた子供と、被災地以外の子供が混在するなかでどう防災教育をしていくかがテーマ」と悩みを打ち明けた。
これに対して附属小の大和一哉教諭らは「昨年度は、肉親を亡くした子供が、授業中に泣き出すこともあった」というが、学習を進めるにつれて、「次第に震災と向き合えるようになった」という。
どう発信するか震災防災教育の情報
神戸市の防災教育センターには「震災の語りべを紹介してほしい」という問い合せが、これまでに全国から二万件を超えているという。被災地・神戸から震災防災教育の情報をどのように伝えていくかは、大きなテーマだといえる。
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