北アルプス大日岳で昨年三月、当時の文部省主催の登山研修に参加していた神戸大ワンゲル部の溝上国秀さんら二人が、足元の雪が崩れて転落死した事故で、文部科学省は二月二十六日、事故原因に関する調査報告をまとめ、巨大な雪庇は「経験豊かなほかの登山家でも予見できなかった」と結論づけている。遺族はこれに反発している。【2月26日 神戸大学NEWS NET=UNN】
この事故は昨年三月五日、富山県の北アルプス・大日岳(二、五○一メートル)の山頂付近で、現・文部科学省登山研修所(富山県立山町)の登山研修に、全国の大学山岳部・ワンゲル部から参加した大学生と、講師計十一人が足元の雪が崩れ落ちたために転落し、大学生二人が死亡したというもの。昨年五月に都立大理学部二年生だった内藤三恭さん=当時(二三)、横浜市保土ケ谷区=が、七月に当時神戸大文学部二年生だった溝上国秀さん=当時(二〇)、兵庫県尼崎市=がそれぞれ遺体で発見された。
二月二十六日に、文科省の事故調査委員会が公表した調査結果によると、事故当時山頂付近では、登山ルートのある尾根からひさし状の雪の固まり「雪庇(せっぴ)」が、四十メートルほど張り出していたという。研修の講師が、この雪庇を山の陵線と思い込んで登山コースを誤り、この上で休憩していたところ雪庇が崩れて事故が起きたという。
報告では、このような巨大な雪庇は国内で報告例がなく、気象などの自然条件が重なって崩れたもので、専門家も予測不可能で、報告書は雪庇が三月初めに崩落した例がないことなども挙げて「仮に経験豊かなほかの登山家でも予見できなかった」と結論づけている。
共同通信は、同省生涯スポーツ課が「講師陣に過失があったかどうかを含めて国として遺族への補償を検討したい」としている、と報じている。
一方、読売新聞は、調査は非公開で、遺族側が求めた意見表明の機会設定を拒否したことから、遺族側は強い不信感を示しており、内藤さんの両親は「なぜ頂上を間違えたのか、という点をきちんと説明していない。今後の対応によっては裁判を起こすことも考えたい」と語った、と伝えている。
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