震災などで被災した歴史資料の保全活動などの事業を進める「神戸大学文学部地域連携センター」が1月17日、文学部に設置された。設立から1か月が経ち、大規模な協議会を開催するなど、活動の幅を広げつつある。【2月17日 神戸大学NEWS NET=UNN】
地域連携センター設立の背景には、阪神・淡路大震災後から神戸大文学部の奥村弘助教授らが中心になって被災した歴史資料の保全を行ってきたボランティア団体「歴史資料ネットワーク(史料ネット)」の活動実績がある。史料ネットは大震災での経験を生かし、2000年の鳥取県西部地震や01年の芸予地震などで被災史料の迅速な保全活動を支援。地域と連携して、貴重な歴史史料を被災地から救出した。
今回、地域連携センターの活動目的にも「大学、自治体、市民団体が密接に連携した、被災した歴史史料の保全活動、保全活動を通じての被災体験の未来への伝達と地域市民の歴史意識の形成のための活動、それを活かした町づくり活動」が掲げられており、センターはこのような活動を大学が具体的な事業として進めるために設立された。現在、センターの研究員は奥村助教授をはじめ6人。すでに、「阪神・淡路大震災資料の保全活用についての関係機関との協議」、「兵庫県新宮町との自治体史編さんにかかわる共同研究」などの事業を始めている。
「歴史史料は地域の中にある。いかに地域からの視点をもてるかどうか」と奥村助教授。大震災当時は被災地・神戸に大勢の研究者が詰めかけ、住民側がうんざりしたことがあった。研究の材料としてだけではなく、史料の価値を地域に伝えることで住民からも貴重な情報を得られるようになり、さらに活動を広げられるという。
さらに、奥村助教授は「社会の変わり目を迎えるときに、史料は次の社会モデルの土台になる」とも話す。「平成の大合併」が叫ばれ、市町村の再編統合が進む現在、たとえば大震災の時に問題になったインフラの整備をどう進めるのか。社会の変動期にこそ、センターのような存在が必要と考えている。史料ネットでの経験をもとに、「歴史を(地域の)みんなで共有していきたい」と奥村助教授。
また、同センターは3月の2日に歴史・文化遺産の保全などにかかわっている市民(ボランティア)、NGO、自治体、研究者らを招いて協議会を開く予定。分野の違う関係者らを招いた会は全国的にも初めての試みだという。
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