仲間の遺作、上演へ 震災時の仲間ら企画

 震災で逝った演劇仲間が残した脚本を、上演したい━━。震災当時、自由劇場の部員だった故・神徳史朗さん(当時=工学部・3年)の友人らが、そんな企画を進めている。友人たちは、1月17日には六甲台学舎の震災慰霊碑を訪れた。【1月17日 神戸大学NEWS NET=UNN】

 震災で亡くなった故・神徳史朗さん(当時=工学部・3年)の友人、前田敦史さんと門屋史明さんは1月17日正午、六甲台キャンパスの慰霊碑に訪れ、銅板に刻まれた神徳さんの名前をなぞり、故人の冥福を祈った。

 前田さん、門屋さんは、神徳さんと同じ神戸大自由劇場の部員だった。3人は、神徳さんの下宿先で、よく酒を飲みながら、夢や悩みを語る仲間だった。震災前年の年末にも門屋さんが、下宿先に訪れたばかりだった。「神徳とは一緒に芝居をやった仲。表面だけの付き合いでなく、真剣に思いをぶつけられる仲間だった」と話す。
 「あの日」、門屋さんは下宿していた神戸市東灘区で訃報を聞いた。「間違いであってくれ」との思いで、連絡のあった遺体安置所に走った。「駆け付けると、神徳は頭を抱えたままの姿勢で横になっていました。顔は真っ青でした」と話す。
 下宿していたアパートが倒壊、神徳さんは梁の下敷きになった。即死だった。震災当時、大阪で連絡を受けた前田さんは言葉をなくした。「人の命が、こんなにも簡単に奪われるなんて…」。

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 9年が経った今も、「神徳が死んでしまったという気がしない」と前田さん。「来年で震災10年を迎える。自分たちに何かできないか」と考えるうち、ある構想が浮かんだ。
 倒壊したアパートから、神徳さんが残したノートが見つかっていた。神徳さんが書いた芝居の脚本だった。「この脚本を劇化できないだろうか」と考えた。同期の神戸大自由劇場OB・OGに電話をかけた。
 演劇を続けている人、サラリーマンとして頑張っている人、海外に飛んでいる人。「すぐに40人ものOB・OGが手を挙げて、協力したいと言ってきてくれた。みんな離ればなれになったけれど、やはり思いは一つだった」と前田さんは話す。こうして、神徳さんの遺留品のノートに書かれた脚本を劇として実現する「神-1(じん・わん)企画」が動き始めた。

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 神徳さんは長崎県五島列島の出身。両親は、毎日の史朗さんの墓参りを欠かさないという。「神徳の御両親に劇の意味を納得させることができなければ、この企画は実現できない」。思いを伝えるため、両親に会った。すると、笑顔が返ってきた。「今でも史朗を思って、お友達が動いてくれるのは嬉しい。史朗の名誉を傷つける内容でなければ、是非やってほしい」と快諾してくれた。
 今回の企画は、神徳さんに対する「挑戦状」だという。「神徳の芝居に対する情熱と戦いたい。だから挑戦状なんです」と前田さん。「神-1企画」は、まだまだ道なかば。企画のために立ち上げたホームページには、こう書かれている。
 「ジンちゃん、もう一回、一緒に芝居やらへん?」。

 「神徳ともう一度芝居をしたい」との思いが、前田さん、門屋さん、そして神戸大自由劇場の有志を突き動かす。

※詳細は「『神-1』企画」HP(http://www.geocities.jp/jinta1995/)で。

【お詫びと訂正】記事中の神徳さんの名前が一部、間違っていました。正しくは「神徳史朗さん」です。関係者の方々、および読者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫びして、訂正します。《1月19日21:00 編集部》

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