見直そう安全対策 震度5弱の地震教訓に

 近畿地方を中心に2度発生した震度5弱の地震からまもなく1か月。神戸大には一人暮らしの学生も多いため、地震に襲われたときの対処法は各自で身につけておく必要がある。都市安全研究センターの北後明彦助教授は「まず揺れをしのげる場所に逃げ込め」とアドバイスする。【9月28日 神戸大NEWS NET=UNN】

長い横揺れに、さまざまな行動

 9月5日の日曜の午後7時7分の地震(M6.8)では奈良、和歌山両県で震度5弱を記録。
 また午後11時57分発生の2度目の地震(M7.3)は三重、和歌山、奈良の各県で震度5弱を観測した。兵庫県南東部では、いずれも震度3だったが、震源が紀伊半島沖、東海道沖だったため、横揺れが長く続いた。ひとり暮らしの生活では、恐怖を感じた人も多かっただろう。

 この地震の際、神戸大の学生がどのように行動したかニュースネット委員会が学内で60人にアンケート調査を行なったところ、「すぐに財布だけ持って部屋を出た。」(国文・下宿生)、「外に出るか迷ったが、とりあえず部屋を出て廊下で揺れが治まるのを待った」(発達・寮生)、「揺れ出してすぐ、家族と外へ出た。」(海事・自宅生)、「逃げなかったが、その場でテレビをつけっ放しにした。」(工・寮生)など、人によってさまざまな行動をとっていたことがわかった。
 実際には何が最も安全で、正しいのだろうか。

「まず身の安全を」と都市安全研・北後助教授

Photo 神戸大学都市安全研究センターの北後明彦(ほくご・あきひこ)助教授は、地震が始まったときは
 1. 自分の周囲の揺れをしのげる場所にすぐ逃げ込む。
 2. 揺れが止まるまで待ち、周囲の状況を確認する。
 3. 逃げる、あるいは普段の生活に戻る。
 という手順を踏むべきだという。
 揺れ始めてすぐ脱出しようと部屋の扉を開けたり、火の元を確認することは、大地震ではかえってけがや死亡につながる可能性があり、安全とは言えない。
 地震の規模、住んでいる場所にかかわらず、まず安全な場所(頑丈な机の下など)で揺れが静まるのを待つことが大切だ。ただ、自室と廊下が隣り合わせのマンションや寮などは例外で、揺れてすぐ玄関から廊下に出るほうがむしろ安全だという。
 
 また、阪神大震災のように、暗い時間帯に地震に遭う場合を想定して、懐中電灯と携帯ラジオは必携。運動靴などを備えておくと何かと重宝する。ガラス等で足を切ると、その後、自由に行動できなくなるからだ。

 屋外で被害に遭った場合も手順は同様で、
 1. まず自分の周りに塀、瓦、電柱など、崩れてくるものがないか確かめたうえで地震がおさまるのを待つ。
 2. 安全で広い場所へ移動し、正しい情報を入手する。
 これだけで地震の被害はかなり軽減できるという。
 原付や自動車を運転している場合は、そのまま走行するのは危険なので、路肩でエンジンを切り、周りを見ることで余計な事故を避けることができる。

【写真】阪神大震災ではニュースネット編集部員の下宿も倒壊。成人式で帰省していて難を逃れた。(1995年2月 神戸市東灘区住吉宮町で)?

阪神大震災の教訓 非常時のシミュレーションを

 阪神大震災では、神戸大の学生44人(うち神戸商船大5人)、教職員・生協職員5人が尊い命をおとした。
 倒壊したアパートの中での圧死が最も多く、脱出できずに焼死した学生もいた。
 また、シェイク様の揺れの中で電子レンジが頭にあたって亡くなったと見られる学生、倒れてきた本棚の下敷きになって命を失った職員もいた。

 電話が輻輳し連絡が途絶える中、寮やゼミ、サークルの仲間が協力して友人の救出にあたったり、避難所になった学内の体育館でボランティア活動をはじめる学生もいた。
 そして生き残った多くの学生は、ライフラインが絶たれて、多くが実家に帰省したり、友人のマンションに身を寄せたりした。
 また、大学側は学生や教職員の安否確認に膨大な時間を費やし、教育、研究機能も数週間マヒする事態に陥った。
 (「神戸大学震災犠牲者への追悼手記」「ドキュメント神戸大学’95」参照)
 
 地域との結びつきが薄い、ひとり暮らしの学生は「災害弱者」ともいえる。
 とっさの時のシミュレーション。下宿や研究室など身の回りの安全対策。そして、いざというときの連絡体制や避難生活のための防災用品。
 今回の地震を機に、自分の身の回りを見直してみてはどうだろうか。 (記者=森田 篤)


●紀伊半島沖地震、東海道沖地震に関するアンケート

 神戸大ニュースネット委員会では、紀伊半島沖地震、東海道沖地震の発生直後の行動について、9月18日(金)、21日(火)の2日間、国際文化学部の陸橋と文・理・農学部生協ランス、六甲台生協付近で聞き取り形式のアンケートを行った。神戸大生61人に、「今月上旬の二度の地震の際、あなたは何をしましたか」と訪ねた。主な回答は次のとうり。

 ・「部屋の机の下に隠れた」(発達・下宿生)同様意見ほかに15人、計16人。
 ・「すぐに財布だけ持って部屋を出た。」(国文・下宿生)同様ほかに11人。
 ・「外に出るか迷ったが、とりあえず部屋を出て廊下で揺れが治まるのを待った」(発達・寮生)同様ほかに8人。
   (全員マンション住まいや寮生。地上まで降りるか迷った人もいた。)
 ・「揺れ出してすぐ、家族と外へ出た。」(海事・自宅生)同様ほかに5人。
 ・「逃げなかったが、その場でテレビをつけた。」(工・寮生)同様ほかに2人。
 ・「何もしなかった」(理・自宅生)同様ほかに9人。
  (理由は、大して揺れなかった、揺れに慣れてしまった、倒れてくるものが周りになかった、電話中、トイレ、など。)
 ・「寝ていた」(海事・自宅生) 1人。
 ・「運転中だったので気づかなかった」(経済・下宿生) 1人。
 ・「旅行中。地震があったこと自体知らなかった。」(経営・下宿生) 1人。?

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