5年前の北アルプス大日岳の研修登山事故の遺族と支援者らが、3月4日、署名14万人分を主催責任者の文科省に提出する。犠牲になった神戸大ワンダーフォーゲル部の溝上国秀さん(当時20歳)の母・洋子さんは、「いまだにゆっくりと子どものことを考えている暇もない」と胸のうちを話した。【3月4日 神戸大NEWS NET=UNN】
2000年3月5日富山県北アルプス大日岳で文科省の主催で行なわれた冬山研修中に雪庇崩落事故が発生し、神戸大2年の溝上国秀さんら大学生2人が死亡した。事故から5年目を迎える3月4日、遺族と支援者らが文科省に対し、責任と謝罪を求める署名14万人分を提出し、文科省前で裁判支援を訴える。 同事故では都立大2年の内藤三恭司さん(当時22歳)と神戸大2年の溝上国秀さん(当時20歳)が雪崩に巻き込まれ死亡した。その後、文科省によって事故調査委員会が開かれ、報告書が作られたが、遺族らがこれに反発。事故の真相究明と主催者・国の謝罪を求め02年3月5日に富山地裁に提訴した。現在も審理が続いている。
毎年提出している署名も今年で3回目の提出となる。故・溝上国秀さん(文・当時2年)の母・洋子さんは、「事故から5年、提訴から3年なんですが、本来命日は署名を提出する日ではないんです。いまだにゆっくりと子どものことを考えている暇もない状態です。こういう重みを文科省にもわかってほしい」と胸のうちを話した。
また、「何年たっても気持ちは同じです。さみしいです。親が原告としてたたかれなければならないなんて、きっと子ども自身も辛いと思います。亡くなったら亡くなったでどうしたらよいのかと考えたら、冬山を安全にするという次のステップにいくしかないんです」と話した。
溝上さんによると、国は、はじめ、「雪庇に入ってはいけない」と主張していた国が、今では「雪庇の吹き溜まり部分なら乗っても構わない」と主張を変えたという。この変化に対し、「嘘を嘘で隠すような態度はとってほしくない。雪庇が崩れるか予見できないのなら行く必要はないんです。国の対応がおかしいと思うからこれだけの方から署名が集まり、多くの方が支援してくださるんです。国としては謝罪して、もう一度白紙に戻して冬山を安全にするという次のステップへと進んでほしいです」と話した。
3月4日は午後2時から文科省前で大日岳裁判の支援訴え、午後3時から中山成彬文部科学大臣、文科省生涯スポーツ課へ署名を提出する。
文科省へのアクセスは、JR東京駅、丸の内線東京駅から地下道より直結。(記者=杉浦加奈)
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