神戸大のホームページ(HP)合格発表ミス問題は、ネット社会ではケアレスミスが重大な影響を及ぼすことを露呈した。3分間とはいえ、前年の合格番号を掲出したことで、受験生にはかり知れないショックを与えた。「自殺者がでたらどうするのか」という指摘に、大学はどう応えていくのか。今回の誤掲載問題を検証する。【3月14日 神戸大NEWS NET=UNN】
《「アップの手順を間違えた…」》
「きわめて人為的なミスで、受験生に心配をかけ申し訳ない」。野上学長は、3月10日の記者会見で大学側の非を認めた。
2006年度前期入試のホームページ(HP)上での合格発表で、発表開始の午前10時から3分間、前年度の合格者の受験番号を誤って掲載してしまったのだ。
大学によると、前期日程は全11学部で6362人が受験し、1941人が合格した。
全受験生のうち1379人の合格者が不合格と掲載され、1146人の不合格者が合格と掲載された形になった。
タイトルには「平成17年度 前期日程」とあったが、定刻の10時に公開されたリストは「平成18年度」の合格者発表だと、多くの受験生が信じた。
ミスは極めて単純だった。「誤った情報のアップ」ではなく、「今年のデータのアップ作業中に、残っていた昨年のHPを公開してしまう」というミスだった。「アップの手順を間違えた」(入試課)という。
《小さな誤算 昨年のデータの残存》
去年と、今年の「各学部の合格発表掲載ページ」は同一のファイル。つまり、ネット上の“番地”(アドレス=URL)はいっしょ。ただ、そのページにたどり着くための「表紙のページ」(http://www.kobe-u.ac.jp/nyushi/prompt-index.htm)には、まだ「各学部の合格発表掲載ページ」へのリンクを掲載していない状態にしていた。つまり、“門”を閉じた状態にしていた。
担当者は10時に作業を始めた。一気にデータをアップする段取りだった。
しかしここで、小さな誤算があった。各“番地”には昨年のデータが残っていたのだ。実は、このデータは今年1月に担当者が誤って大学のコンピュータに送信したものだった。
《“門”を開いてしまった》
大学の説明によると、データの書き換え作業は、10時ジャストに行われた。
「表紙のページ」(indexファイル)と、「各学部の合格発表掲載ページ」(PDFファイル)全11学部分データを同時にサーバーに投入した。
ところが、データの軽い「表紙のページ」はすぐにアップされてしまった。一方、重い「各学部の合格発表掲載ページ」のアップはゆっくり進んだ。
受験生側からみると、10時ちょうどに、「表紙のページ」は「各学部の合格発表掲載ページ」へのリンクを張ったページにさし替わった。つまり、各学部の合格発表一覧への“門”が開かれた。しかし、その先の「各学部の合格発表掲載ページ」では古いデータ、つまり昨年のデータが今年のものに順に塗り替えられる途中だった。
受験生からのアクセスは10時に殺到。おりしも開いた“門”から、昨年のデータが掲載されたままの「各学部の合格発表掲載ページ」になだれ込んだ。
全学部のデータ更新が完了したのが「10時1分」(入試課)。10時から10時1分までの1分間に、118件のアクセスが、昨年のデータにつながってしまった。
しかし、これで事態は収まらなかった。まだ更新されていない、もう1台の“影武者サーバー”が存在したのだ。〈つづく〉
前期日程の合格発表でのホームページ発表ミスを、3回シリーズで検証します。(HP合格発表ミス問題取材班)
【写真下】入試課などが入る、神戸大学本部棟。
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