ただ生きててほしい 親が思う「命の尊さ」

 突然の事件や事故。そこでは尊い命が奪われているにも関わらず、人はその記憶を、時間とともに忘れていく。私たちは命について、どう考えるべきか。事件や事故で亡くなった神戸大生の遺族、友人の言葉をもとに「伝える“命の尊さ”」と題した連載を行う。第1回は、大日岳事故で命を落とした溝上国秀さんや両親の言葉から。【5月17日 神戸大NEWS NET=UNN】

 「生きとってほしい。子供が親の前に死んだらあかんわ」と語るのは、2000年3月5日の大日岳遭難事故で亡くなった溝上国秀さん(当時神戸大・2年)の父・不二男さんと母・洋子さん。溝上さんの両親と、同事故で亡くなった内藤三恭司さん(当時東京都立大・2年)の両親は2002年3月5日、国に約2億円の損害賠償を求めて富山地裁に提訴しており、先月26日勝訴判決を受けていた。これに対し国側は今月2日、名古屋高裁金沢支部に控訴した。
 ワンダーフォーゲル部に所属していた国秀さんは、国主催の登山研修中に事故にあった。不二男さんによると国秀さんは「山でごみを捨てるなんてもってのほか」と話すほど、倫理的、道徳的な人柄だった。両親は「大学生になって(考え方などが)大人っぽくなり、頼もしくなった」と成長を喜んだという。国秀さんは事故前「俺の生きる理由は家族やねん」と友人に話していた。洋子さんは「誇りの息子やった」と語る。事故から6年たった今でもつらさが残る。表向きの生活は元通りになったとはいえ、心の底から笑うことはない。
 第二審は7月中旬頃から始まる予定。6月3日には神奈川で裁判報告会を行う。神戸でも行いたいという意向。「(文部科学省は)本来命の尊さを伝えるべきなのに」と不二男さん。「一審で裁判所が国の責任を認めたくれたのは嬉しかった。だから国も認めてほしい」と二審に向けての思いを語った。
 今の学生たちに対して両親はともに「『親はこんな思いでおるんやで』ってわかってほしい。死んだらあかんわ。人様に迷惑をかけなければ何をしていてもいい。ただ生きててほしい」とあらためて命の大切さを強調した。(記者=西麻理子)

※連載「伝える“命の大切さ”」は全5回を年内に掲載予定です。?

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