阪神・淡路大震災をテーマとした災害授業「共に生きる社会」が12月11日、留学生センターで行われた。多文化理解演習の一環として開かれた授業には、22人の留学生らが参加。日本という異国の地で、震災を学ぶ彼らの姿にせまった。【12月11日 NEWS NET=UNN】
「今から12年ほど前に、神戸で何が起こったかわかりますか」。留学生センターの瀬口郁子教授の問いかけに、学生らは視線を上げた。その顔ぶれのほとんどが、日本に住み始めて間もない留学生だ。今年から神戸大で学び始めたばかりの学生も多い。
年齢はもちろん、学生の国籍は中国、韓国、フィンランド、ロシア、ドイツなど広い範囲におよぶ。世界から集まった学生らは、被災した神戸の街の映像を食い入るように見つめた。
震災当時、神戸大には43か国552人の留学生が在籍していた。このうち7人の命が、震災によって奪われた。日本で生活する当時の留学生は、恐怖に包まれた。「世界の終わりがきた」「戦争が始まった」「六甲山は火山だった」「象が大地を踏み鳴らした」。母国の価値観に基づくさまざまな推測やデマが、留学生の間で飛び交ったという。
留学生の場合、来日して間もない段階では、地域とのパイプやネットワークは圧倒的に少ない。阪神・淡路大震災では、日本で生活を始めてわずか数か月で被災した学生もいた。
「先生、こわい」。震災当時から、留学生の相談指導を担当する瀬口教授にある学生から電話が入る。受話器越しに、別の学生が母国に帰りたいと訴えていた。このとき瀬口教授は「震災のショックから立ち直れないでいる留学生の心のケアが必要」と感じた。その思いは、留学生の体験記がおさめられた文集「忘れられない…あの日-神戸からの声-」発刊へとつながる。「自分の母国語で思いをつづれば、少しは気が楽になるのでは」との発想から生まれた。
それぞれの手記は日本語、英語、母国語で併記され、一部が配布資料として受講生に配られた。授業に加わった「震災を読みつなぐ会」のメンバーが、学生を前に資料を朗読する。当時の学生の思いは音声としてよみがえった。参加した学生は、読み手を見つめ、英語や母国語の表記と読み比べていた。
授業終盤、瀬口教授は尋ねた。「災害を減らすために、私たちができることは何でしょうか」。参加した学生からは「震災の知識をできるだけ身につける」「環境を傷つけず、自然を守る」「できるだけ友達のネットワークをつくる」などの意見があがった。
震災を読みつなぐ会の下村美幸さんは「日頃のコミュニケーション」を勧める。「例えば隣(の家)に住む人とあいさつすると、いざというときに『あの人は大丈夫かな』と気づかってもらえる。阪神大震災では、ケガをした6万人以上の市民のうち4万人近くが、地域のおかげで命を助けられた。だからコミュニケーションを大事にしてほしい」と説明する。
授業を受けた留学生からは「やはり災害のときはお互いに助け合うのが重要。これからもみんなやさしい気持ちで生きてほしい」などの感想が寄せられた。
異国の地日本で学ぶ震災。たとえ地震の揺れを体験していなくても、それぞれの学生が考えるきっかけを得るはずだ。
【写真中】身振りをまじえ、震災について説明する瀬口教授。
【写真下】辞書を参考に、日本語で考えをまとめる留学生ら。(いずれも12月11日・留学生センターで 撮影=森田篤)?
【関連記事】特集・忘れたらあかん!!阪神大震災
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。