平成20年度から使用される高校2年生向けの英語教科書「WORLD TREK ENGLISH COURSE?」(桐原書店)に、阪神・淡路大震災で犠牲になった競基弘さん(当時・自然科学研究科博士前期課程1年)の話が掲載されることになった。競さんのロボット開発にかけた思いが、当時指導教官だった松野文俊助教授(現・電気通信大教授)のレスキューロボット研究に受け継がれていることなどが綴られている。松野教授、競さんの父親の競和巳さんに話を聞いた。【10月3日 神戸大NEWS NET=UNN】
? 震災で約6400人もの命が失われ、教え子を亡くした一方で、松野教授自身は被災地でなにもできなかった。「助けられなかった」(松野教授)。このことが、松野教授に工学の研究者として人を助けるために何をすべきかを考えさせることになった。その答えとして、松野教授は基弘さんの「ドラえもんのような人の心を癒すロボットを作りたい」という思いを引き継いで、人の役に立つロボットを作ろうと考え、被災地で生存者の捜索などを行うレスキューロボットの開発を始めた。
現在、松野教授は東京都調布市の電気通信大に勤務し、ロボットなどを用いてレスキュー活動を物理的に支援するレスキュー工学などの研究を進めている。夢は2050年までに国際救助隊「サンダーバード」を完成させること。人類が月へと到達するアポロ計画も当初は夢物語と思われていたことを例に挙げ、「次の世代、次の世代が私たちの思いを引き継いでいけば、目標達成は不可能じゃない。教科書も若い世代へ(思いを)伝えるものの一つ」と松野教授は話す。
まだ一般的にはそれほど知られていないレスキュー工学を世間に浸透させるため、松野教授はメディアに働きかけるなど精力的な活動を続けている。その研究にかける思いは、震災が起こって10年以上経過した今も変わらない。『Keeping Motohiro’s dream in mind, I’d like to work hard to help more people survive disasters.(基弘さんの夢を心の中にとどめつつ、より多くの人が災害から生き残れるよう努力していく)』(文中より抜粋)
<<ご子息の思い、若い世代に>>
基弘さんのロボットにかけた思いが、松野教授のレスキューロボット研究を通じて若い世代に受け継がれていく。愛知県に住む、父親の和巳さんは「息子に対する思いは(地震が起きた)平成7年から変わらない。けれども、レスキューロボットの研究は、松野さんといった神戸大に関わりを持つ人々が中心となってやっている。感謝しています」と話している。
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