養老孟司氏講演 環境と健康問題を斬る

日本包装協会による第17回年次大会が7月4日、百年記念館六甲ホールで開かれた。大会のはじめに、2003年にベストセラーとなった『バカの壁』の著者である養老孟司氏が「環境と健康」をテーマに特別講演を行った。聴講には約300人が訪れ、養老氏の講演に聴き入った。【7月5日 神戸大NEWS NET=UNN】

Photo 養老氏は大きな拍手で迎えられると、温暖化に取り組む世界の姿勢について鋭く斬り始めた。「消費側ばかり抑制するのはいかがなものか。ありとあらゆるものへの省エネには限界が見えている。例えば、一年ごとに1パーセントずつ石油を売る量を減らせば温暖化対策になるだろうが、実際には生産側に抑制はかかっていない」と述べ、現在の環境問題の要となっている石油を論点に据えた。養老氏は石油は使いつくされると喚起した上で、次の段階へ進むヒントを示した。「石油の消費量と経済発展は比例関係にあることを発表したのは意外にも物理学者だった。色んな形で問題に対応していくべき」。訪れた人々は環境問題の盲点をつくような話を真剣な様子で聴いていた。

 もう一つのテーマである「健康」を語る際に養老氏が挙げたのは、2007年にノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏だった。『不都合な真実』は環境問題へ取り組む姿が評価されたアル・ゴア氏の著書であるが、その中で養老氏の着眼点は環境だけでなく健康にも及んだ。養老氏が注目したのはアル・ゴア氏のタバコの考え方だった。『不都合な真実』では、優しかった姉に発症した肺ガンの直接的な原因をタバコとしている。ここに養老氏の鋭いメスが入った。「肺ガンの原因をタバコだけにするのは短絡的すぎる。ガンの発症はポーカーのように運によることが多い」と自身の医学知識を裏付けにして批判。タバコを吸うことでストレスから解放されていたためにゴア氏の姉は優しくいられたのかもしれないと話し、「反対側から考えることが大事」と愛煙家の養老氏らしい見解を示した。養老氏によると今の社会は「健康という病気」を患っている。昨今の健康ブームがまさにそれである。健康を害するとみなされたものから得られる益を益と認めない社会をもう一度考えてみることが提案された。「反対側から考える」。これが養老氏から今の社会に出された処方箋だった。

 「これからはみなさんが考えていかなければなりません」。人々が考えていくことで新しい時代が構築されていく。その新しい時代を養老氏は「非常に良い時代」と位置づけた。次世代を担う若者たちへ期待を託して講演は終えられた。会場には、学生の姿も多く見られた。講演を聴きに訪れた女子学生(発達・2年)は「養老氏が好きで来た。難しいところも多かったが随所に出された小さな話が深かった」と感想を述べ、講演を楽しんだ様子だった。

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