調査結果を報告 四川大地震報告会

第2回四川大地震報告会(主催・神戸大都市安全研究センター)が7月26日、工学部キャンパスで行われた。研究者6人が被災地の現状や課題を発表した。【7月27日 神戸大NEWS NET=UNN】

 中国四川省を襲った四川大地震から約2カ月が経過した。報告会には工学系から神戸大都市安全研究センターの斎藤雅彦助教、同センター特別研究員の沖村孝氏、同センターの北後明彦教授、工学研究科の鍬田泰子准教授、同研究科の孫玉平教授、文化系から国際文化学研究科の王柯教授が参加し、研究、活動報告を行った。

<被災地の現状伝える 斎藤雅彦助教>
 斎藤助教らのグループは7月1日に被災地の綿陽、安県、北川自治県周辺を調査した。「検問が厳しかった」と自由に調査ができない被災地の状況を伝える一方で、「商店などが盛り上がっていた」と活気が戻ってきたことを報告。
 問題として挙げたのは仮設テント、住宅の衛生状態だ。冷暖房設備などが備わっていない状況に「これからは夏本番。環境が厳しくなる」と斉藤助教は憂慮した。

<ライフラインの復興状況 鍬田泰子准教授>
 鍬田准教授らは水道ライフラインの被害調査などを目的に7月12日から17日まで都江堰市、彭州市を訪れた。
 水道ライフライン断水人口は1059万人、被害総額は27億人民元にのぼる。今回調査を行った都江堰市では、日本で多く使用されているダクタイル鋳鉄管などと比べ、セメントなどでできた脆弱な管路を使用していることが埋設管被害を大きくさせたと分析する鍬田准教授は「一部を地上配管で仮復旧させることで、1段と早い復旧を見込めた」と話した。

<震災と比較 沖村孝特別研究員>
 沖村特別研究員は地盤工学会復興技術協力団の一員として6月下旬と7月上旬に現地入りし、被害状況を調べた。
 沖村特別研究員は比高約500m以上の山腹急斜面の崩壊が目立っていたことを報告した。「比高の低い山の岩質は軟らかく、傾斜も緩やかであるから」という。現在も落石などが発生しており、山間部での復興作業に支障が生じている。「断層の位置や落石する位置を考えた作業をする必要がある」と沖村特別研究員は話す。

<耐震基準に課題 孫玉平教授>
 孫教授は今回の地震で被害が大きくなった原因を4つ挙げる。想定外規模の地震、住民の安全意識の低さ、技術者不足、耐震設計に対する理解の甘さだ。
 日本と同様に、中国にも地震の大きさに応じた耐震基準が規定されている。しかし、基準をチェックする機関は政府ではなく民間企業。更に山間部では基準が守られないまま住民が快適性を求めて自作するなど基準が浸透されていないのが現状だ。その理由として「文化や伝統を中国は重視しているから」と孫教授。
 また、90年代以後の建築物が「地震で多く崩壊し、設計・施工ミスが目立つ」という。市場開放を行い、安全性を軽視し安価で家を建てる建築企業が増えたからだ。

<震災の記録を生かす 王柯教授>
 神戸大大学院国際文化学研究科の王柯教授は日本華人教授会議と連携し、関西の大学に通う中国人留学生ら約40人とともに兵庫県、神戸市や同大が保管する阪神・淡路大震災の資料を中国語に翻訳する作業を行っていることを発表した。
 翻訳された資料は7月27日から8月2日にかけて来神している「四川省復興調査団」に贈呈する予定。王教授は「神戸の重要性をアピールできる」と話す。

<発生2カ月後の生活 北後明彦教授>
 北後教授は7月20日から23日にかけて都江堰市を訪れた。地震が発生して約2カ月。市街地では活気が戻ってきたが、「地震が怖い人は今も家の前にテントを張って暮らしている」現状を話す。
 復興が進むにつれ、住宅ローンの返済問題など被災地では新たな問題が出ている。「十分な枠組みづくりが必要」と北後教授は考える。

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