母への思い、子への思い 陶板になった加藤さんの手紙展示、西宮市で

昨秋、大塚国際美術館(徳島県)の公募で陶板となった、阪神・淡路大震災の被災者の加藤貴光さん(当時法・2年)の手紙の展示式が7月17日、アクタ西宮東館6F大学交流センターで行われた。母・りつこさんから西宮市副市長へ陶板が手渡されると、拍手が起こった。展示式とともに「震災を忘れない!翼を風にゆだねる“いのちのコンサート”」も開催された。【7 月21 日 神戸大NEWS NET=UNN】?

 平成5年に広島から神戸大に進学し、阪神・淡路大震災で亡くなった加藤貴光さん。貴光さんは、入学式に出席できず式前日広島へ帰るりつこさんの上着のポケットに手紙を入れた。りつこさんへの感謝と、自分のこれからへの希望をつづった手紙。昨年秋、その手紙は貴光さんの顔写真とともに大塚国際美術館の公募で陶板となった。りつこさんの友人の西村恭子さんが、2000年保存ができるとされる陶板に焼くことを勧めた。「りつこさんに、貴光くんのことを踏まえて、その上で乗り越えてほしい」(西村さん)。
 この陶板は昨年、貴光さんの誕生日である12月20日から翌年の3月31日まで大塚国際美術館で展示された。
 西宮市での展示は西宮市職員の伊藤裕美さんが提案。貴光さんの手紙の詞に曲をつけた歌「親愛なる母上様」の存在から加藤さんを知ったという伊藤さん。同美術館で展示終了後どうするのか尋ねたところ、「貴光のいた西宮市に置いてもらえれば」というりつこさんの希望があった。同美術館での展示が終わった後、りつこさんは西宮市に寄贈した。陶板は今後、西宮市に永久保存される。

 「私はあなたから多くの羽根をいただいてきました。人を愛すること、自分を戒めること、人に愛されること……。この二十年で、私の翼には立派な羽根がそろってゆきました。そして今、私はこの翼で大空へ翔び立とうとしています。誰よりも高く、強く自在に飛べるこの翼で」。(一部抜粋)

   貴光さんは戦争を嫌い、世界平和の実現を強く望んでいた。将来、国際平和のために働こうと、生前は国際学生会議(ISA)に所属。「人間同士は絶対友情を保てる」という思いを持ち続けた。
 貴光さんから手紙が送られてから16年。ボールペンの字はかすれ、紙が赤茶けるなど手紙自体にも物質的な風化が進む。「貴光を二度も死なせたくない」とりつこさんは思った。
 「陶板に焼き付けられ、永久保存されるなら」。
 「この手紙には自分の名前が出てこないので、普遍性がある。だからこそ、みんなに見てほしい」。
 そんな思いから、りつこさんは手紙を陶板に焼いた。
 陶板を西宮市に寄贈したことについて、「彼はここ西宮から世界に旅立とうとし、そして別の世界に旅立ってしまった。目的地は変わったが出発地はここ。だからここに(陶板を)寄贈した」と話した。



Photo この手紙には曲がつけられ、「親愛なる母上様」という歌になった。平成19年にインターネット上でこの手紙の存在を知った音楽家の奥野勝利さんが曲をつけ、歌が完成。
 今回のコンサートでは「親愛なる母上様」を含む4曲を演奏した。
 奥野さんは、「あの手紙は僕に光をくれた。あの曲に救われている。手紙がなかったら歌ってないと思う。聞いた人にとっても光になってほしい」と歌への思いを話した。

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