今年9月に上陸し、紀伊半島に大きな被害をもたらした台風12号。被害を受けた地域はもちろん、その周辺地域も風評被害により観光客が大きく減少したという。「学生の目線で、風評被害の激しい奈良南部を紹介してほしい」との願いを受け、神戸大学ニュースネット委員会の田中遼平と鈴木太郎が、11月24・25日の1泊2日で、国土交通省近畿運輸局主催の、「奈良県南部地域(吉野、天川村)風評被害対策モニターツアーに参加した。普段の「学生を取材する」という趣旨と異なるが、私たちが吉野、天川で感じたことを中心に伝えていこうと思う。【12月13日 神戸大NEWS NET=UNN】
まず私たちが向かったのは、JR天王寺駅から車で1時間半ほどの奈良県吉野町。春はおよそ3万本の山桜が咲き誇る景勝地で、壬申の乱で大海人皇子が本拠地としたり、南朝の拠点が置かれたりするなど、多くの歴史の舞台となってきた。今年は東日本大震災の影響による観光自粛ムードにより、桜の時期である4月に客足が伸びなかった上に、9月の台風による風評被害で9・10月の観光客が例年の3割減になるなど、観光業は大きくダメージを受けている。今回私たちが訪れた蔵王堂、吉水神社、竹林院は、台風による被害がほとんどないように見え、山のあちこちでは美しい紅葉を楽しむことができた。
次に向かったのは、天川村にある洞川温泉。大峯山山上ヶ岳への登山基地として栄え、現在も修験者をもてなし続けている秘境の温泉地だ。修験者の受け入れ先として発展してきたため、他の温泉街とは異なる、神秘的で幻想的な雰囲気が漂う。澄み切った水も洞川温泉の魅力だ。鉄分を含んだ水が鍾乳洞を通り抜けることで、まろやかな味の水が湧き出るという。洞川の名水を利用した豆腐は、舌触りがよくなめらかだ。
洞川温泉は台風12号による特に物理的被害はなく、道も通じているにもかかわらず、台風直後は観光客からのキャンセルが1,000件を超えるなど、激しい風評被害に見舞われたという。今でも客足は前年の半分ほどだ。
洞川温泉の旅館「紀の国屋甚八」に宿泊した翌日は、洞川地区を流れる山上川の下流に位置する御手洗峡を散策した。吊り橋や遊歩道にも被害はなく、色とりどりの紅葉と力強い渓谷の流れを満喫した。
その後向かったのは、天河弁財天。芸能の神として、長い間崇められてきた弁財天の拝殿には、能舞台も併設されている。ここは天川村内で直接台風の影響を受けた地域だ。弁財天のある坪内地区は、脇を流れる天の川の下流が土砂でせき止められて水があふれ、160cm浸水したという。現在は建物や街の復旧も終わり、通常通り観光できる状況になっているが、周りの建物の壁に残ったわずかな泥の跡が浸水の恐ろしさを物語っていた。
今回のツアーで訪れた場所は、関西圏にありながら観光地としてあまりメジャーではなく、訪れる学生も少ないと思う。しかし、メジャーでない穴場ならではのゆったりとした雰囲気に私は癒された。今回訪れた場所はどこも、通常通り観光できる。ちょっとした休みにふらっと癒されに訪れてみるのはいかがだろうか。
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