災害に強い社会へ 田中泰雄教授最終講義

都市安全研究センター長を務める、田中泰雄教授の定年退職にともなう最終講義が24日、中央区の湊川神社楠公会館で開かれた。田中教授は自身の研究者としての人生を振り返りつつ、防災や減災についての思いを語った。工学研究科の中山昭彦教授の最終講義も併せて行われ、大学関係者や卒業生などおよそ120人が2人の講演に耳を傾けていた。【2月26日 神戸大NEWSNET=UNN】

田中教授は1966年に神戸大に入学し、工学部で土木工学を専攻した。大学卒業後に一度就職し、下水処理施設の建設に携わった。そのときに「なかなか思い通りにいかない」地盤の魅力に取りつかれた。この経験が後に研究者として地盤を専門とすることにつながったという。カナダ、イギリスへの留学後は神戸大工学部に戻り、主に関西国際空港やポートアイランドなど埋立地の地盤の調査を行ってきた。

阪神・淡路大震災で被災してからは、研究者として被害のデータを集めることに全力を注いだという。時には同じ被災者に「犠牲者を食い物にしているのか」などと罵倒されることもあったが、地道に調査を重ねたそうだ。1996年、都市安全研究センターの発足と同時に工学部から移り、以来震災の経験を伝える役割を果たしてきた。スマトラ島などの震災の被災地を訪れることもあり、そこでの経験から「私たちだからこそ被災者の背負う痛みが分かる。神戸の被災地であった経験を伝えて、国際協力に生かしていくべき」と話した。

「工学などの自然科学だけでなく、法律などの社会科学的な問題も震災では重大だった」と当時の経験を交えて話した田中教授。東日本大震災では、日本社会の脆弱性が露呈したことにも触れ、「今までの縦割り式の社会では交流のなかった、専門家の集団どうし、大学どうし、それぞれの地域どうしでつながっていこう」と災害に強い社会づくりに向けて提言した。

中山教授は自身が学んできた流体力学について、スライドやアニメーションを交えながら講義した。会場からは時折笑いが漏れるなど、終始和やかな雰囲気で進行した。

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