神戸大にはピエロがいる。モノクロの衣装に、素顔を隠す仮面。腰には三本のナイフ。謎めいた微笑みと、ピエロの証である目元の涙。国際文化学部キャンパスのベンチに出没しては一言も喋ることなく、筆談で学生と会話する。学部、学年、目的不明。すべてが謎に包まれたこのピエロに、当委員会の記者が迫った。 【10月23日 神戸大NEWS NET=UNN】
取材場所は国文食堂。こちらが指定した時間になると、どこからともなくピエロが現れた。食堂ホール内では衣装が目立ってかなりの注目を浴びるが、それを楽しむかのように微笑んで手を振る。席についてまず挨拶を交わすが、やはり筆談での会話となった。手始めに学部や学年を尋ねると「学部は秘密。学年も秘密。名前はピエロさんって呼んで」と書いた。やはりこのあたりのガードは堅いようだ。
ピエロとしての活動を始めたのは、昨年の10月31日。ハロウィンで仮装がしたくて衣装を探すうち、ピエロの服に一目ぼれをしたのがきっかけだという。普段の活動は平日の昼間に国文キャンパスのベンチに座ること。自ら動くことは無いが、話しかける人がいれば気さくに応えている。ジャグリングも得意で、頼まれれば披露することもあるそうだ。
多くの人が疑問に思っていただろうピエロの目的を尋ねると「とりあえず自分が楽しいからやってるだけ。それで喜んでもらえるなら万歳であって、ここからどうしたいってのは特にない」と、掴みどころのない回答。今度は「ピエロはアルバイトとして誰かに雇われているらしい」という噂の真偽を追究する。これには「元々は派遣的なバイトだったけど、今は業務委託みたいなカタチ」とはぐらかした。やはり謎に包まれたピエロだけあって、核心に迫る質問はのらりくらりとかわしていく。
後継者は特に募集してないが、「やるなら勝手にしてくれればいいし、すぐにでも隣のベンチに座ってくれていい。でも出来ればドナルドマクドナルドの格好をしてほしい」と書いた。今後は六甲祭に出没すること、ハロウィンの日に神戸大から出発する仮装行列に参加することを企んでいるそう。
最後にどうしても気になる「中の人」についてしつこく食い下がって聞いてみた。これにはこっそり「中の人については何も言えないし、言わない方が面白い。でも国際文化学部ではないとだけは教えとく」と明かしてくれた。
取材が終わると、ピエロはやはり口元に笑みを浮かべたまま闇に溶け入るように去っていった。素性を探るため尾行したい気持ちに駆られたが、そこまで無粋なことはできなかった。秘密は秘密だからこそ美しい。謎に包まれているからこそ、ピエロはピエロなのだ。
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