10月19日、兵庫県多可町観音寺集落で、学生村づくりプロジェクト木の家(木の家)のログハウス完成を祝う竣工式が行われた。集落世帯数27、人口111人。いわゆる過疎化が進む観音寺集落で、2011年秋より木の家は地域住民と交流を重ねながらログハウス建設に取り組んできた。純粋に「ログハウスを自分たちでつくってみたい」という思いからスタートした木の家は、他の地域活性学生団体とは少し異なる。
木の家元代表で団体創設者の1人である卒業生の山崎陽介さんは、発足当時は半年でログハウスを建てられると甘く考えていたと言う。しかし建設資金は集まらず、建設予定地である観音寺の村の人との関係も上手くいかない。仲間とともに何度も自分たちの活動の意味を問い直した。村祭りへの参加や特産品の販促、雪の中での植林活動、水田の泥抜きや畑の手伝いなど村の人々と様々な活動をしていく中で、田舎の仕組みや村について知っていき、次第に観音寺を大切に思うようになった。
木の家が初めてプロジェクトについて村にプレゼンをしにきたとき、夢だけを語る学生のずさんな計画を聞いて正直呆れたと住民の永井浩喜さん(53)は言う。「今も不安な気持ちは変わらん。ログハウスの次はどうすんの?って話」。
それでも、多くの村の人が木の家の活動に協力してくれている。浩喜さんも木の家の「常連さん」のひとりだ。「数えきれないほど叱られたけど、見捨てずにいてくれる。村のためになるかわからない僕たちの活動にどうしてこんなに付き合ってくれるのか」と学生に聞かれ、一瞬とまどう。「なんでって……自分でもわからん」。学生たちは自分の子供と同世代だが子供を見る目とは違う。「もしかしたらお前らより俺のほうが楽しんでるかもしれん」。第2のふるさととして観音寺が学生にとって気軽に帰って来られるところになればいいと浩喜さんは語る。
【写真】盛り上がる懇親会の様子(10月19日・兵庫県多可町観音寺集落で 撮影=井沼睦)
木の家発足以来率先して学生を鼓舞してきた観音寺の永井良昌さん(68)は自身も意欲的に観音寺の活性化プロジェクトを手がけている。木の家の活動に賛成しない村の人々がいることも知っているが、「田舎は閉鎖的になりがち。外を向いて何かしなければ進歩がない」という一貫した問題意識を持っている。良昌さんは木の家の活動が地域活性につながるには最低20年は必要だと予想するが、「5年後10年後、1人暮らしのお年寄りがでてくる。そんなとき、木の家がいてくれると助かる」という村の人もいる。
竣工式の後には、学生と村の人々の懇親会が行われた。テーブルには学生と村の奥さんたちが一緒に作った料理が所狭しに並んだ。特産の日本酒・山田錦がまわり、宴会は大盛り上がりをみせた。木の家は、たくさんの人々の想いを積み重ね組み上がったログハウスを拠点に次は外から人をどんどん呼んでいきたいと考えている。木の家と観音寺の第2章の始まりだ。
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