「酒無し」「開催時間午後2時から10時まで」厳夜祭縮小発表の衝撃から1週間。祭りを愛する学生からは落胆の声が聞かれ、一部では大学側に決定撤回を求める署名活動も起こっている。しかし早くも今年の出店を取りやめる団体も出るなど、先行きは厳しい。それぞれの反応を追った。
・戸惑い、苛立ち、出店学生の思い
「まさか今年からとは」と残念そうに話すのは、ちんどん屋サークル「神大モダン・ドンチキ」代表の島崎真央さん(文・3年)。ここ2年間厳夜祭存続が危ぶまれる状況のなか、ステージ発表や出店で祭りを盛り上げてきた。「深夜のお店にはプロのちんどん屋さんや関東在住の神大OBも駆けつけてくれる。六甲祭と違う独特の魅力がある」。開催時間の短縮でこうしたお客が減ることは確実だ。
昨年天文研究会でプラネタリウムのバーを出店した大学院生(理学研究科修士課程)は「大学を説得してなんとか存続に持ち込ませた実行委員にはホンマに感謝。でも『はいそうですか』で済ませていい問題じゃない」と語気を強める。バーには近隣の医師や関西の天文家が訪れ、グラスを片手に「厳夜祭の自由な雰囲気が好き」と喜んだという。飲酒禁止や時間短縮で魅力が半減となれば「あとはジリ貧。数年後には祭りが途絶える」。決定を覆すことは難しいが「参加団体としてここで踏ん張らないと」と、縮小反対の署名活動を呼びかける。
一方、今年の出店を取りやめた団体もある。日本酒サークル「正宗会」代表の末澤昇悟さん(経済・4年)は「残念だが、お酒 が出せないとなればうちが出店する意味は無くなる」と話す。各地の酒蔵や飲食店を巡って日本酒の品評を行い、厳夜祭の店をその唯一の発表の場としていた。祭りの当日は大学付近に場所を移して店を開く予定だが、「集客できるかは未知数」と不安は大きい。
・OB、実行委員「やれるだけでも」
厳夜祭の本来の主催者だった夜間生。OBとなってからも毎年店を手伝う伊崎春樹さん(経済・2011年卒)は「形態が変わっても、夜間生の歴史を伝える祭りとして存続してくれたら嬉しい」と心境を語る。働きながら大学に通うことの多かった夜間生は「祭りへの愛着があまりなく、自分のような人は珍しい」という。伊崎さんは今年も参加する予定だ。
厳夜祭実行委員会は、昨年の開催後から存続に向けて大学と交渉してきた。大学は夜間の校舎提供や飲酒をリスク管理の面から嫌っていたが、何よりも「夜間生無しで厳夜祭は開催できない」という前提が立ちはだかった。委員の1人は「多くの委員は『祭りはもうできないかも』という中で交渉してきた。開催できるだけでもありがたいというのが多数派だ」と話す。2012年に実行委員長を務めた関本龍志さん(法・4年)は「お酒とオールナイトは祭りのアイデンティティ。六甲祭と時間も被るし、お客は確実に減る」と厳しい顔だ。「実行委員会は酒のリスク管理は毎年きちんとしてきた。今年は無理でも来年以降従来の形で開催できるよう交渉したい」。一方教員からは「大学が管理主義になるのは時代の流れ。祭りを存続させるには『これまで許可されていたから』ではなく、夜にやる意義をきちんと提示しないと」という意見も聞かれた。
実行委員会は公式twitter上で「飲酒、オールナイトの魅力に負けない企画を用意する」とツイートした。逆境に打ち勝つだけの魅力を生み出せるか、文字通りの「厳」夜祭となりそうだ。
※【厳夜祭縮小問題】
厳夜祭の実施条件には「夜間生がいること」といった内容が盛り込まれている。しかし神戸大は2007年度を最後に夜間生募集を停止しており、現在も在籍するわずかな夜間生は今年の秋にほぼ卒業するため、本来なら今年の厳夜祭は開催できない。また、大学側は以前から厳夜祭の「アルコールOK」「オールナイト開催」という形態について、施設や学生管理などの面から問題視していた。実行委員会と大学の交渉の結果今年の開催は認められたが、「アルコール禁止」「午後2時から10時までの開催」と、大きな縮小となった。
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