久々に地元に帰ると、アーケード街に高齢者向けマンションが建っていた。通学路にあった工場はつぶれ、同級生は職が見つからぬという。

 「中小倒産」、「若者流出」、「介護疲労」、「限界集落」。地元で飛び交うホットワードは重い。大学で聞くスローライフへの憧れも、政治家や学者の「地方創生」への期待も空虚に覚える。解決するには重すぎる課題を抱える当事者が、もはやあきらめの平穏を志向する場所。それが地方だ。が、一番問題なのは、その当事者から逃れようとする自分なのかもしれない。

 「場所愛」とは、人と場所が情緒的な感情でつながっているという概念だ。その場所での体験やイメージが強く影響するという。何があったかはよく覚えていないが、地元に哀愁は感じても愛着は湧かない。地元で生き続ける同級生や、都会から移住してきたベンチャー農業家は、愛着があるからこそ田舎で暮らすのだろう。当事者となれることが、素直にうらやましい。
 
 ふと、阪神・淡路大震災を考える。遠い都会で我が子を失った遺族にとって、神戸から心理的に離れることは不可能だ。愛着とも哀愁とも別の、言語化し難い情緒がそこにあるのだろうか。自分ができることは、ただ彼らの声を聞き発信することだけだった。

 地元にできることも同じかもしれない。当事者となれぬなら、せめて寄り添って。だから帰省は欠かすまい。 

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