震災伝える記者の葛藤

ニュースネット委員会は9日、阪神・淡路大震災と東日本大震災に関するトークイベントをLANS BOXで開催した。イベントには東北大の新聞部記者や、通信社・新聞社の記者が参加。記者たちは、震災を伝える重要性と、読者の震災に対する関心が薄れている現実との間で葛藤する胸中を語った。

前半は各登壇者から基調講演が行われた。神戸新聞社記者・岩崎昂志さん(ニュースネット委員会OB)が阪神・淡路大震災20周年関連報道に携わった経験を報告した。家をなくした被災者のために自治体が民間から借り上げた住宅の返還期限が迫っている問題や、震災の記憶の継承など、20年経った今も伝えるべき問題があると訴えた。

また共同通信社記者・深江友樹さん(同)は、東日本大震災後に福島や盛岡で勤務。東京電力福島第一原発事故で出た放射線廃棄物の処理問題や、被災者が仮設住宅を出たあとに近所との関わりが薄れる「コミュニティ分断」の問題を取材した。大阪に転勤してから震災報道の少なさを感じているという深江さんは、「被災地では風化の実感はほとんどない。しかし被災地の人の思いが東京や大阪には伝わりにくくなってきている」と話した。

学生記者の立場からは、ニュースネット委員会の20年間の取り組みを田中謙太郎編集長(発達・4年)が紹介した。阪神・淡路大震災で犠牲となった学生の遺族を毎年取材し続けている中で「遺族の声を伝えていくことも大事だが、一般の学生にとって興味のある記事でなくなりつつあるという課題もある」と、報道の仕方にさらなる工夫が必要だとの認識を示した。

トークイベントには東北大学友会報道部記者の高橋直道さん(東北大・2年)も登壇。東北大などを会場として3月に開催された国連防災世界会議を取材した経験を報告した。高橋さんは被災者や遺族への取材ができていないことや、学内のボランティアサークルが多すぎてそれぞれの活動内容を把握できていない結果、取材が難しくなっていることなどを課題に挙げた。

後半のトークセッションでは、学生新聞が震災を伝えることの意義について議論した。岩崎さんは「取材を通して学生が震災に関心を持つようになること自体に意味がある。若い世代が震災に関心を持つことは将来の防災を考えるうえでも重要だ」と指摘。高橋さんは「記憶が忘れられることはある程度仕方ないが、思い出すきっかけは必要。その1つが学生新聞ではないか」と震災報道の重要性を強調した。

来場した中村国男さん(工・3年)は「記者の方々も悩みながら報道していることが分かった。震災の当事者とそうでない人を結ぶ役割をメディアは担っているのだと思った」と感想を述べた。

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