公共空間での禁煙が主流となる中、神戸大でも2年前に八十数カ所あった喫煙場所が52カ所に減少した。大学は「理想は敷地内全面禁煙」としているが、他大学では全面禁煙化後に喫煙スペースが復活した例もあり、神戸大での実現はいまだ不透明だ。
医学部の敷地内では既に全面禁煙となっているが、六甲台地区や深江地区で今のところ実施される予定はない。安全衛生・環境管理統括室で安全衛生コーディネーターを務める田邊忠特命教授は全面禁煙化について「新たな喫煙者をつくらない効果がある」と意義を認めている。しかし「理想は全面禁煙だが、いきなり踏み切ることはできない」と軟着陸を目指す方針だ。
全面禁煙化にはリスクが伴う。龍谷大では2009年の全面禁煙化後、大学付近で喫煙する人が続出。近隣住民から吸い殻が落ちていると苦情が相次いだ。瀬田キャンパスでは付近の山に隠れて喫煙する人も現れ、山火事の危険性も生じた。学生部の川畑真紀さんは「(健康の問題から)吸う場所の問題にすり替わってしまった」と語る。
そこで龍谷大は10年に「卒煙支援ブース」を設置。禁煙キャンペーンを学友会と連携して行うなど、啓発活動も続けている。保健管理センターは、問診やニコチンパッチの処方を学生と教職員には無料で行っている。
神戸大も、喫煙者がニコチン依存から脱却する重要性は認識しているが、教職員に対し健康診断で指導するなどに留まっている。学務部学生支援課によると学生向けの全学的な啓発活動は行われていないという。
医学部附属病院の西村善博副病院長は「喫煙者の健康被害を見逃していいのか」と指摘。近年では一部企業が喫煙者を採用しない方針を示すなど、喫煙が就職活動に与える影響は少なくない。大学の姿勢が問われている。
◇附属病院が禁煙教室
医学部附属病院は無料の禁煙教室を開き、喫煙者の卒煙を支援している。十数年続く取り組みで、教室では看護師がニコチン依存の仕組みや、治療法などについて説明する。担当看護師の蓬莱(ほうらい)節子さんは「禁煙に向けて前向きなイメージを持ってもらう努力をしている」と話す。
希望者は有料の禁煙外来を受診できる。医師と共に具体的な治療法を決定し、禁煙に向けて治療を開始する。教室受診後、外来で治療を受けている女性は「自力でやろうとしても数日で諦めていた。お医者さんは丁寧に説明してくれるので助かる」と話した。
禁煙教室は毎月第2・第4水曜日の午後2時から。受診には電話予約が必要。
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