「ほんとうにもう動けないのです」。市川さんは卒業論文に、借り上げ住宅の入居者から寄せられた悲痛な声を載せた。
借り上げ住宅制度は災害で家を失った被災者のために、行政が民間の住宅を借り上げて公営住宅並みの低家賃で又貸しするもの。阪神・淡路大震災の際に導入。公営住宅を新しく建てずに済む点で、画期的と賞賛された。
しかし神戸市や兵庫県などが、20年間の入居期限を理由に退去を求め始めた。借り上げ住宅に住む高齢者や障害者にとって、住環境の変化は大きなリスク。継続入居の許可を求める住民もいる。
市川さんは、学内のサークル「灘地域活動センター」の活動で入居者との交流を続けてきた。「震災は過去のものだと思っていた」と市川さん。入居者の話を聴く中で、震災が現在進行形の問題だと気付いた。
研究では新聞記事や書籍を読み込み、入居者15人にもアンケートを実施。執筆した論文で行政側の法解釈の問題点を複数指摘し、退去要求の正当性に疑義を呈した。
「知った者の責任として周りに伝える必要がある。一人一人の声に耳を傾けることの重要性を言い続けたい」と決意を新たにした。
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