小学4年から3年間担任だった先生は、今でも私を支えてくれている。スポーツマンで芸術家気質。ときに厳しく、ときに優しい。先頭に立って生徒たちを引っ張りながら、遅れそうな子の背中を押してくれるような人だった。私は幼いながらに、なりたい「大人」を見つけたと憧れていた。
私たちの小さな努力や成功を、先生は見逃さない。毎日帰りの会でそれを褒めて「えらいカード」というものをくれた。先生が細かいことまでちゃんと見てくれているのがうれしくて、友人と競うように宿題や掃除に励み、カードがもらえるよう努力した。
また児童一人一人に当番制で日記を書かせた。めったに回ってこないが、書けば先生が読んで感想をくれる。先生に興味を持ってほしくて、友人と遊んだことや家族旅行について何時間もかけて書いた。
私たちの卒業と同時に先生も学校を去ったと聞く。それからどこに行って、今何をしているのか全く知らない。卒業前に聞いた住所に年賀状を送っても届かない。先生との思い出は卒業式で終わっている。
大学生になってお酒も飲めるようになった。あれから日記に書けるような経験をいくつもしてきた。やっと「大人」に近づいた。しかし先生は私の前にはもういない。
今でも私は小さな努力や成功を重ねようと生きているのかもしれない。高校までの部活動も受験勉強も、そして今の記者活動も。いつかまた出会ったときに「えらいカード」をもらえるように。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。