【コラム伏流水】「途中」の先には

 「途中」というバス停が大津市にある。琵琶湖西のJR堅田駅から北上する江若バス堅田葛川線。なんと「途中」が終点の便もある。墓参りの際、車で近くを通った。国道367号は「途中」交差点を過ぎると、山道に入りしばらく集落はない。なるほど名に反して終点になり得るわけだ。

 この道を行けばどうなるものか――。行けば分かるさ、と言うのは簡単だが進む本人の不安は深刻だ。小中高生の自殺が夏休み明けに急増すると言われ、「無理して学校に行かないで」と呼び掛ける動きもあった。しかし「学校に行かない」という道の先を想像するのは難しい。いっそここを終点に、と思い詰めるのも理解できる。

 小学生時代の私は、最大で週6日ある少年サッカーの練習が、盆休み明けに再開されるのがつらかった。同学年どころか後輩にも差をつけられ、監督の怒号と周りの冷たい視線を浴びた。それでも「辞めたい」と親に意思を伝える勇気はなく、ただただ我慢。結局サッカーは中学の部活動引退まで続けた。

 高校入学で生活は一変する。部活動で映像制作に熱中し、気の合う友達とは延々と楽しく雑談できる日々。かつて予想しなかった未来だ。

 国道367号は昔、日本海の魚介を京へ運んだ「鯖(さば)街道」の一つだ。「途中」の先のつづら折りを抜けると、清流沿いにおいしいさばずしの店が並ぶ。苦境の子どもたちに掛ける言葉を見つけるのは易しくないが、せめてどんな道の先にも幸あれと願う。

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