【1月号震災特集】犠牲学生の漫画を本に 後輩のデザイナーが企画

 「空を泳ぎたかった魚の話」と題されたパラパラ漫画。魚は海を飛び出し、空をはためくこいのぼりへたどり着こうとするがなかなか届かない――。そんな物語は、震災で亡くなった発達科学部2年生の上野志乃さんが生前描いたものだ。父の政志さん(70)ががれきから拾い上げた遺作を、志乃さんの後輩がいま絵本にしようと動いている。

 志乃さんは1人暮らししていた灘区琵琶町のアパートが震災で崩れ、下敷きになった。政志さんは毎年命日の朝にアパートの跡地を訪ね、手を合わせる。2017年はこの場に、志乃さんの高校の5年後輩でグラフィックデザイナーの本下(ほんげ)瑞穂さん(38)も加わった。16年のニュースネット震災特集で政志さんを知り、同委員会を通じて連絡。対面が実現した。

 本下さんは、志乃さんが発達科学部の美術受験に備えて入った画塾にも通っていた。面識はなかったが、卒業生作品として先生から紹介された志乃さんの木炭画に感銘を受けた。デザイナーになってからも仕事に苦しんだときは木炭画を思い出し自らを励ます。

 6月、政志さんからパラパラ漫画を見せられた。「作品が生きていると感じた。絵本にすれば図書館など温かくて日常的な場にも志乃さんの名が残るのでは」。提案に政志さんも喜んで賛成。本下さんは既に漫画を印刷会社へ持ち込み、どのような形で出版するか検討を進めている。

 志乃さんは生前、染色の道へ進むことを考えていたという。「私と同じく芸術を志した人の漫画を作品として世に出してあげたい」と話す本下さんに、政志さんは笑顔でうなずいた。

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