創立60年を前に 完全復活への一歩を踏み出した応援団


【インタビューLIVE】神戸大学応援団総部 第59代団長・宮脇健也さん


(写真:2019年4月7日 大阪・舞洲ベースボールスタジアムで)

 6月23日、おろして間もない学ランに袖を通した新リーダーたちの姿は、少し不安そうで、そして一生懸命だった。
 大阪・高石市の大阪府立漕艇センターで行われた神戸大漕艇部の大阪市立大との対抗戦。曇り空だが、スタンドは活気に満ち溢れている。応援団はその中央にいた。
 去年、3年ぶりに休部状態から復活した神戸大学応援団は、新体制となって2年目のこの春、新たに団員を7人迎え入れ、リーダー9人体制に。
 宮脇健也団長の指導のもと、5月から応援の練習を積んで来た。喉は酷使され声は枯れ、それでも声を振り絞る。腕を振り続ける。選手たちに精一杯のエールを送る。
 応援団完全復活の、大きな一歩を踏みだした。
 この日初めて、新入団員全員のエールがそろって海にこだました。


(写真:この日、新入団員全員のエールが響いた 6月23日 大阪府立漕艇センターで)

立命館大から神戸大に編入

 神戸大学応援団は学ラン姿のリーダーがいない休部状態が続いていた。しかし、去年の春、一人の男によって、再び歴史の歩みを進めた。
 宮脇健也、第59代神戸大学応援団総部団長。
 2018年春に立命館大から神戸大3年に編入し、それまで小学生のころから続けていた馬術の道を離れ、応援団に加わった。

 「小学校一年生の時に初めて乗馬体験をして、乗馬の楽しさに気づいたんです。翌年、親を納得させて乗馬教室に通い始めました」という。中学から立命館大の付属校に入り、高校、大学と馬術で通した。高校時代、全日本ジュニアやジャパンオープンで優勝するなど輝かしい結果を残している。
 立命館時代には交友関係も広がり、能楽師として活躍している大槻裕一さんや、イギリスでバレエダンサーとして活躍している金原里奈さんとは現在も交流が続く。充実した学生生活だった。
 「全国大会で優勝してから、馬術に対してやり切った気持ちが出てきたんです。目指す先はオリンピックで、そのためにはヨーロッパへ渡るしかない。そんな状況で改めて自分の進路を考えたときに、父の影響もあり、文系が強い神戸大学に進んで会計を学ぶ選択肢を見つけました。」


(写真左:取材に応じる宮脇団長の表情は柔和だ 6月25日 ink books&coffee で)
(写真右:応援スタンドでも時折笑顔を見せる 4月7日 大阪・舞洲ベースボールスタジアムで)

団員ゼロの応援団に飛び込む

 1年にわたる試験勉強の末、神戸大学経営学部への編入が決まった宮脇さんは、アメフトの試合会場に足を運んだ。そこで見たものはどこか物足りない、スタンドの光景だった。
 「それまで当たり前に思っていた、応援団がいないということでした。春の新歓祭で、応援団が実質的に休部状態であることを知りました」。ただ、最初は応援団に飛び込む気はなかったという。「当時はすごく悩んだことを覚えています」。

 1960年に創立された神戸大学応援団総部は、学ラン姿のリーダーとチアリーダーが所属する「応援団」と、「吹奏楽部」で構成。2010年、盛大に創立50周年を迎えたが、その後部員が減少し、2015年、リーダー団員はゼロに。体育会の試合の応援には、吹奏楽部が単体で駆けつける事態となった。一方で、2016年にアメフト部が、独自にチアリーダー・グループ「レイバンズ・チア」を立ち上げた。
 休眠状態から3年となる2018年春、応援団OBは背水の陣で臨んでいた。同じ応援団総部というつながりがある吹奏楽部の部員にも新歓活動を手伝ってもらって、懸命の新入生勧誘を続けた。
 そして宮脇さんは決断した。「応援団の先輩や吹奏楽部や体育会メンバーの方々らの支えもあり、応援団に所属することを決めました」。


(写真左:学内各所に張り出された「団員募集」のチラシ)
(写真右:「誰も入らなかったら…」プレッシャーの下での新歓をゴルフ団員と2人で乗り切った 4月7日 大阪・舞洲ベースボールスタジアムで)

完全復活か再び休眠か 命運かけた今年の新歓

 2018年は宮脇団長にとって、激動の1年だった。7月15日の硬式野球神京戦で、学ラン姿でデビュー。応援団復活を知らせる、一人でエールを送る姿の載ったカラーのチラシが、学内のいたるところに張り出された。新聞、学内紙、学内ラジオの取材申し込みも相次いだ。地元紙の見出しには「スタンドからたった1人で全力エール」とあった。
 そんななか、秋新歓である変化が訪れた。11月。タイからの留学生、トンミー・ウォンサトーンさん(国人)、通称ゴルフさんが、応援団の門をたたいたのだ。これでようやく、リーダー2人体制に。しかし、安心はできなかった。
 「ゴルフは今年の夏の盛りを迎えるころ(2019年8月)には国に帰ってしまう。僕もあと1年で卒業」
 2019年の春の新歓で、下級生が入ってこなければ、その次の春には再び団員ゼロの危機を迎える。
 「今年の新歓で誰も入らなかったら、応援団は元の状態に戻るわけで、プレッシャーで眠れない夜もありました。特に新歓の初めの3月、4月は不安で仕方なかったです」と振り返る。それでも、「絶対に(応援団に入ったことを)後悔させない」と、体験に来た新入生には愚直に想いを伝え続けた。


(写真:5月から6月にかけて、練習には次々に新入団員が加わった 六甲台グラウンドで)

観客席一体となって応援できるように導きたい

 4月、5月は毎週、体験会や食事会を重ねた。そして、何人かの新入生が入団希望を伝えてきた。
 連休明けの5月7日には、新入生を交えての初の練習。ツイッターには「ガムシャラに付いてきてくれる新入生の姿勢に上回生も刺激を受け、良い雰囲気で練習が進みました」とつづった。
 「応援するにはその『型』が大事なのはもちろんのこと、応援の『スピリット』や応援をしながら『考えること』が大切なので、それを伝えられるように心がけています。神戸大学応援団の『スピリット』とは、『観客全部を巻き込んで、観客席全体が応援団として応援できるように“導く”こと』です」。


(写真:9人が旧三商大合同演舞演奏発表会のステージを演じきった 6月29日 六甲台講堂で)

今春、男子5人、女子2人が加わり9人の「団」を率いる

 6月29日(土)、六甲台講堂で旧三商大の応援団合同演舞演奏発表会が行われた。
 ステージセンターに歩み出て、一人ずつ自己紹介を兼ねて大声で述べる「学生注目」という出し物。笑いを誘うエピソードを交え、団員としての意気込みを太い声でそらんじなければならない。新入団員の顔に緊張が見て取れる。
 少しつかえるシーンでは初々しさもあったが、今川芙美乃(経済)、船越晃一郎(国人)、奥谷賢弥(経済)、平田充稀(同)、山崎勝生(同)、古田徳幸(同)、山下美沙(同)。新団員の男子5人、女子2人は見事に会場を沸かせた。
 7人は宮脇団長のもと、この2か月たらずのうちに覚えた「学歌」や応援歌を次々に歌い、演じ、フィナーレは応援歌「宇宙を股に」とエールで締めくくった。

 思い起こせば、去年は、宮脇団長たった一人のステージだった。今回は9人が振り付けをそろえ、1時間という長丁場のステージを見事に演じきり、観客に向け勇気や元気を届けた。
 神戸大応援団の「復活」の第一歩を踏み出した宮脇団長の目は、ステージの上から遠くを見すえていた。

 最後に応援することの最終目標が何なのかを聞いた。
 宮脇さんは少しうつむき、「ずっと考えているけど、まだこれという結論は出てません」と言い、こう続けた。
 「でも、思っていることはあって、応援団は神戸大学の学生が卒業した時に『神大生でよかった』と思ってもらえるような活動、みんながもっと大学のことを好きになれるような活動をしていきたい。そのためには、応援団を中心として神戸大学生同士の“わ”を広げていきたい」。

【宮脇健也 みやわき・けんや】
1997年11月生まれ。立命館宇治高校卒。立命館大を経て、2018年神戸大経営学部編入学。第59代神戸大学応援団総部団長。

《取材後記》
初めて応援しているところに伺ったとき、なんて笑顔が気持ちいい人なんだろうと感じた。応援のさなか、客席を見やっては観客を大きな声と笑顔を送る。観客席全体の一体感を感じて、とても気持ちよかったのを覚えている。宮脇さんは取材中に「(この一年)応援団として活動できてホントに良かった」としきりに言っていた。本心なんだろう、それまでで一番幸せそうに笑っていた。この人が団長なら応援団はずっと神大生に愛され続けるだろうと思った。神戸大学応援団は、来年、創立60年を迎える。(文:森岡聖陽、写真:永瀬裕也、森岡聖陽)


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COMMENT:
AUTHOR: 小林舞子
URL:
DATE: 02/06/2020 17:00:51
問い合わせ
初めまして。
わたくし、2019年に神戸大学を卒業した小林舞子と申します。
突然のコメント、失礼します。
質問があり、ここに書かせていただきました。

上のようなインタビューは、
「神大卒の社会人」でも受けることはできるのでしょうか。
ぜひ神大生に知ってもらいたい人がいるので、もしインタビュー受けられるのであれば、その方法を知りたいです。
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COMMENT:
AUTHOR: 神戸大学メディア研
URL: https://blog.goo.ne.jp/kobe_u_media
DATE: 02/06/2020 19:23:41
小林舞子様へ お問い合わせの返信
小林舞子様

お問い合わせありがとうございます。
神戸大学メディア研の森岡です。

メディア研は神戸大に関する情報を取り扱う学生メディアです。もちろん神戸大を卒業された方も取材させていただきます。

一度、メディア研のメールアドレス( kobe_u_media@goo.jp)にその方のプロフィールとお名前を教えていただけますでしょうか。その上で、編集部でどのように取りあげさせていただくか検討いたします。

今後とも神戸大学メディア研ウェブログをよろしくお願いいたします。

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