問われる課外活動の届け出 形骸化を指摘する声も

 8月6日の神戸大学端艇部のカッター転覆事故で、端艇部は今回の活動について事前に学務部課外活動支援課に「所定の届け出」を提出していなかったと報じられた。課外活動について大学は、合宿や演奏会、コンクール参加、登山などの際に報告を求めているが、学内にはこれが形骸化しているのではないかという声がある。<玉井晃平、森岡聖陽、中島星翔、渡邊志保>

合宿や学外での対外試合 1週間前までに「学外活動届」提出

 今回のメディアの報道で気になったのが、「大学に届出をせずに今回の巡航を行なった」という指摘だ。

 8月6日17時59分に更新されたNHKニュースの電子版(NHK NEWS WEB)も、「神戸大学の学生支援課によりますと、部活動で課外活動を行う場合、参加者や活動内容などを記した申請書を事前に提出する必要がありますが、今回、端艇部からは提出されていなかったということです」と報じている。
 毎日新聞の8月7日付神戸版も、「神戸大学生支援課によると、端艇部から課外活動に必要な届け出がなかったという」と伝えている。
 学生支援課は事故当日の16時過ぎ、メディア研の取材に対しても、端艇部は今回の活動について事前に書類を提出していなかったと答えた。

 神戸大公式サイトによると、課外活動が「合宿や学外における対外試合を実施する場合」の決まりとして、「学外活動届」を実施の1週間前までに提出しなければならない。

 このほかに、課外活動の提出書類は、演奏会や発表会等の行事を開催する場合には「行事開催届」を同じく1週間前までに、各種大会やコンクール等への参加をした場合は大会等終了後速やかに「大会等結果報告書」を、「登山」については「登山等計画書」を行動予定日の1週間前までに提出することになっている。(神戸大サイト「課外活動関係手続と様式」http://www.kobe-u.ac.jp/campuslife/life/club/manual.html

「義務とは思っていなかった」 実施後の提出も 

 しかし、「学生支援課に活動届けを出し始めたのは最近のことで、義務だとは思っていなかった」(運動部)、「合宿は提出するが、そのほかの活動はわからない」(文化部)と、学生側の関心は低い。
 学生支援課も、メディア研の取材に対し「2月のリーダーストレーニングで、(規約を守るように)指導している」というものの、活動実施後に提出される場合もあることを認めた上で、「出されたものは把握しているが、出されずに実施されるのもがあるかどうかはわからない」と答えている。
 届け出自体が、形式だけになっているのではないかという声もある。

「航海計画書」海上保安部には提出していた 端艇部

 今回のような海上での「巡航」と、「合宿」や「対外試合」までの幅広い範囲の届け出が同列で良いのかも、議論が必要だろう。

 今回の事故の報道では、大学に届け出ずに無謀な活動を行なった、という印象だけが伝わったが、端艇部は、神戸海上保安部には航海計画書を提出している。
 同部のホームページには、2014年から2017年まで、夏の本巡航の計画書や報告が掲載されている。計画書には、強風時、波頭が砕け白波が出ている場合を「出艇中止」や「避難基準」にすると定めるなどの事故防止措置や、事故発生時の対応や連絡先が細かく書かれている。一般的な合宿より、はるかに詳しく危機対応が記されているのがわかる。(神戸大学端艇部サイト http://kobe.cutterjapan.com/event.html

「届け出」の形式だけでなく、危機管理ふまえた制度問われる

 それだけに、「届け出を提出したかどうか」の形式だけを問うのではなく、安全管理という本質部分をどう見据えて制度を考えるのかが問われているといえる。
 2003年の商船大との統合で海事科学部が誕生してから16年、学内には新たな課外活動団体も次々にできる中で、どのように制度が改定されてきたのかも検証する必要があるだろう。


(画像:大学公式サイトにある「課外活動関係手続きと様式」)

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