【コラム伏流水】体験していないことを伝える

 ニュースネット委員会で活動した2年間、取材を通して見聞きしたことを記事にし、発信してきた。努力の成果や勝利の喜び、取材相手の体験や思いを伝えることが記者の役割の一つだと考えてきた。しかし活動の中で「体験していないことを伝える」のに戸惑いを感じることがある。

 ニュースネットでは毎年、東遊園地で行われる「1・17のつどい」や神戸大の慰霊献花式を訪れ、来場者から話を聞く。取材の中で被災体験や身近な人を失ったという話に触れることもある。

 昨年の1・17のつどい。来場した高校生の「震災経験もなく、身近に被害に遭った人もいない自分が参加してもいいのか」という声を聞いた時、同じ思いだと感じた。どれだけ被災体験を聞いても、当時の写真や映像を見ても、地震を体感する施設を訪れても、その揺れの衝撃・恐怖、身近な人を突然奪われた悲しみを「本当に分かる」ことはできない。阪神・淡路大震災後に生まれ、大災害を経験したことのない自分が何を聞いていいのか、何を伝えればいいのか、思い出してもらうことで相手を傷付けているだけではないか。

 1年たった今も同じ思いを抱いている。しかし分からないからこそ、知ろうとすることが大事なのかもしれない。知ろうとする人がいなければ、震災の記憶は伝承され得ない。「本当に分かる」ことはできないけれど、今年もつどいや献花式で、体験と思いを聞き出し、私と同じように経験していない人へ伝えたいと思う。

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