遠隔授業開始が連休明けに集中 アクセス障害防げるのか?森井教授に聞く

 4月20日に各地の大学でオンラインでの遠隔授業がスタートしたが、東北大、関大、岡山大などで学生がアクセスできなくなる障害が相次いだ。5月7日は、関西の多くの大学でオンライン授業開始が開始される第2のXデーだ。ネット社会やセキュリティに詳しい神戸大工学研究科の森井昌克教授に、起こりうるアクセストラブルの原因を分析してもらった。

 全国の大学のオンライン授業スタートの第一陣となった4月20日は、各地でトラブルが続出。
 NHKによると、5000人の学生が参加する予定だった東北大では、授業開始直前にログインする画面を開いても、「システムエラーが発生」、「アクセス集中で利用できな状況です」という表示が出て、授業を受けられなくなった
 関大では資料提示やテストの実行、レポート提出や成績データの集計が行えるLMS(学習管理システム:Learning Management System)のサーバーに入れないなどの報告が、ツイッターで相次いだ。
 岡山大でも、LMSの「Moodle(ムードル)」にログインできない状況が発生したと、山陽新聞が伝えている。
 京都市北区の佛教大では、トラブルの影響で授業開始日を5月11日に延期する事態になった。

 ホームページの告知や電話取材によると、関西では連休明けの5月7日に神戸大、立命、大府大、兵県大、神女学院大がオンライン授業を開始予定。教員や学生の習熟研修が続いている。
 4月21日以降順次開始した関学も、5月7日には全面実施に踏み切る。

【オンライン授業開始日】
 神戸大 5月7日開始。
 大府大 5月7日開始。
 兵県大 5月7日開始。
 神女院大 5月7日開始。
 近 大 5月7日開始。
 立 命 5月7日再開。
 京 大 5月7日開始。
 九 大 5月7日開始。
 明 大 5月7日開始。
 千葉大 5月7日開始。
 関 学 4月21日以降順次開始。5月7日には全面実施。
 神戸松蔭大 5月11日開始。
 北 大 5月11日開始(総合教育部)。
 早 大 5月11日開始。
 佛教大 5月11日に延期再開。
 同志社大 5月12日開始。
 大市大 5月14日開始。
 上智大 5月25日開始。

【すでにオンライン授業を開始している大学】
 阪 大 4月9日開始。全学共通科目なども4月20日実施。
 神外大 4月22日開始。29日には全面開始。
 甲南大 4月20日開始。
 阪 大 4月20日開始。
 神戸市外大 4月22日開始。
 甲南大 4月20日開始。

神戸大工学研究科の森井昌克教授にトラブルの背景を聞く

 5月7日にも、4月20日と同じようなトラブルが各地で発生するのだろうか。障害の原因はどこにあるのか、障害を避ける工夫はできるのか。神戸大工学研究科の森井昌克教授にメールで聞いた。

??各地の大学でのこうしたトラブルは、なぜ、どのように障害が起きているのか。

「東北大の場合は、LMSと呼ばれる、出席や資料閲覧、レポート管理等を行うサーバが過負荷になってアクセスできなくなったことが原因です。サーバの処理能力には限界があり、通常、すべての学生がアクセスしてきても、処理できるように設計されているはずなのですが、それがシステムのバグ(誤り)や予想しなかった方法でのアクセス、あるいは予想以上の大量のアクセスが一時に集中すると、処理できなくなります。岡山大でも同様に一部の学生がアクセスできない事態が発生しましたが、4台のサーバで負荷を分散させなければならないのが、設定等の不備で1台に集中してしまい、サーバが落ちてしまう(動作しなくなる)ことになりました。その他、サーバが処理できたとしても、ネットワーク事体がアクセス過多で込み合ってしまい、サーバに到達できず、結果としてアクセスできないこともあります」。

??遠隔授業をスムーズに行うためには、Zoom、Teams、LINEなどの中でどんな通信アプリを使えばベターか。

「一概に言えません。できるだけ対面に近い形での講義ということになると、ZoomやTeamsのようなビデオ会議システムで、資料等が大画面で表示できる必要があり、当然、明瞭な音声も提供できなければなりません。事前に資料を配るシステムも必要です。また対面を実現するためには、原則教員側から学生の顔を見て質問できるようにしなければなりません。それだけではなく、出席管理やレポート提出、それに試験まで行わなければならないのです。しかも公平正当にです。これを実現するとなると、大規模処理ができるLMSサーバ、それに大容量ネットワーク(処理)が必要となります。これは大学側だけでなく、学生側にも必要となり、高い処理能力を有するパソコンやタブレット、それに高速なネットワークが必要になります。一概に通信アプリと言われても答えようがありません」。

??込んだ時間を避ける、ビデオ通信の時間を短くして音声のやりとり中心にするなど、混雑を避ける工夫はあるのか。

「もちろん、工夫はあります。いままでいくつかの大学でアクセスが困難になった第一の原因はLMSサーバへのアクセス過多、そしてネットワーク負荷の増大でした。この対処としては、講義を分散させる、つまり同じ時間帯に学生全員に講義を行わない(これは難しいですが)、必要以上の情報のアクセスを起こさせない、つまり大容量の資料のダウンロード、特に同時ダウンロードをさせない(事前にダウンロードさせる)、教員側のビデオ講義も必要最小限にし、受講側の学生も自分のビデオおよび音声をミュート(遮断)する等、いくつも方法はあります。つまり必要最小限の情報の授受をおこなうということです」。

??関大LMSのサーバーダウンは、遠隔授業の障害とは別の問題か。

「詳しい事情は知りません。ただ、公開されている情報から判断するに、遠隔授業の障害とは無関係ではなく、やはり大量のアクセスが原因で、おそらくLMSサーバ事体は異状なく稼働したとしても、ネットワークが混雑し、つまり輻輳をおこし、LMSにアクセスできない状況が生じたのでしょう。
 神戸大のLMSにあたるBEEFに関しては、LMS自体のサーバ負荷や、ネットワーク負荷に対して十分な対策を取っています。しかし岡山大のように何が起こるかわかりません。ネットワーク負荷に関しても神戸大が万全の体制を布いていても、神戸大に届く前のネットワークでの輻輳が起こる場合もあります。極端に言えば、全国の大学の学生がネットワークを大量に使うと、それだけで、日本のネットワーク全体が、あるいはその一部が普通になってしまうこともあり得ます。学生さんはスマホやキャリア(携帯電話会社)のネットワークを使っている場合が多いので、特定の通信キャリアのネットワークが不通になる場合もあり得ます」。

??神戸大の全学部生合わせて10000人以上に対して神戸大のLMSであるBEEFの最大接続人数は1000人とされる。(https://lecturehub.kobe-u.ac.jp/for_students/)。4月末には環境強化のためメンテナンスが予定されているが、実際に授業が始まった時アクセスには耐えられるのか。

「はっきり言ってわかりません。少なくとも保証できません。ですから必要最小限のアクセスで済ますようにコメントしています。ただ、最大接続数1000人というのは、1000人がBEEFを使った講義を受けたとたんに破綻するという意味ではなく、(基盤情報センターの規模から考えて)瞬間的に同時接続数が1000アクセスという意味でしょう。
 通常の状態であれば、たぶん大丈夫と言えますが、今回は非常時で、使い慣れていない教員と使いなれていない学生が、ほぼすべての講義でBEEFを使う可能性があるので、ダウンする可能性は否定はできません。ただ、現時点で、講義を円滑に行うために、設備を強化する必要があるかといえば、過剰設備の可能性もあり、その必要性は高くはありません。もちろん、設備資金が潤沢にあって、しかも人員が余剰していれば、行っても良いとは思いますが、現実的ではありません」。

 5月にオンライン授業を始める関西のある大学では、4月下旬に教員向けのzoomシステムを使った講習会を2回開いた。教務担当の事務職員も、教員も初めての経験でとまどうことばかり。
 ある教員は、「パソコン画面に参加してこない学生が、欠席なのかネット環境のトラブルでつながらないのかがわからない。きちんとした出欠を取れない」と不安がる。「最初の授業は、顔合わせのリハーサルになるかも」とこぼす。
 「スマホで参加の学生もいるという。小さな画面でどこまで教材を映し出せるのか?」、「実習系の授業は、どこまでオンラインでできるのか」と教員の不安はつきない。

 連休明けは、会社員のリモートワークに加え、小中学生のウェブ授業が徐々に増えるなか、多くの大学で一斉にオンライン授業がスタート。
 社会全体のインターネットのデータ量が増えるなかで、オンライン授業が本格的に船出できるかどうかが注目される。

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