神戸に来るのは後期開始の前日? 入寮予定者たちから不満の声

 新型コロナウイルスの感染拡大で、大学では授業や研究に大きな影響が出ているが、学生寮の現場では、入寮のタイミングを巡って新入生から大きな不満の声が上がっている。
 第2クォーターが始まってすぐの7月3日付で神戸大ホームページに掲載された、「入寮日を9月29日、30日にする」という告知に、「なぜ後期授業開始の前日の入寮なのか」という抗議のツイートが流れた。
 学生支援課の寮担当者は、「予算は4月に使ってしまった」、「寮での事務手続きが面倒になるのを避けたい」という。
 コロナの混乱の中で、「学生ファースト」の大学事務とは何かが問われている。<塚本光、北島麟太郎、玉井晃平>

「入寮日は9月29日、30日」に抗議のツイート

 「(後期の)授業開始の前日にしか入寮できないのはさすがにひどい」。7月8日、ツイッター上に「神戸大学 寮について」という名のアカウントでこんなツイートが投稿された。
 「拡散よろしくお願いします」というコメントともに、「入寮日の変更を求める抗議をするため、寮に入る予定の方には協力してほしいです」とある。
 7月3日付の神戸大ホームページに掲載された、「入寮日を9月29日、30日にする」というメッセージを受けての抗議ツイートだ。

 神戸大には住吉寮、住吉国際学生宿舎、女子寮、国維寮、白?寮の5つの学生寮があり、例年170人前後の新入生が入寮する。今年は、現在約160人が入寮予定だ。
 今春入学の学生は、本来なら4月上旬に入寮できるはずだった。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大や、政府の緊急事態宣言などのため入寮は大幅に延期になっていた。
 
 そんななか、5月25日には緊急事態宣言は解除され、6月下旬からの第2クォーターでは実験・実習などで一部対面授業が始まった。それなのに、このタイミングで、「入寮日は9月29日、30日」と告知するのにはどのような事情があるのだろう。

(画像:7月3日付で神戸大ホームページに掲出された入寮日を知らせる通知。)

「予算と事務量がネック」と学生支援課の担当者

 学務部学生支援課生活支援グループの寮担当に電話取材すると、大きな要因は「予算」と「事務量」だという。
「やむを得ない理由で入寮せざるを得ない一部の人については、実は4月に手続きを行った。年に2回分しか予算がないため、あとは10月入寮者と同時に行うことにした」という。
 東京の語学学校を卒業して前の家を引き払ってしまった留学生や、北海道・沖縄など遠方在住ですでに航空券を取ってしまった学生など、20人前後が4月にすでに入寮していると担当者はあかす。
 弱い立場の学生に寄り添った対応だった。ただ、この際の告知の履歴は、ホームページから削除されてしまっていて、どのような救済を学生に広報したのか、残念ながら今は読み取ることはできない。

 では、この救済措置から漏れてしまった学生には、どのような対応を取るのか。
残念ながら、4月の予算は使ってしまったので、あとは9月用の予算しか残っていないというのが取材への回答だった。
 「手続きの時には住吉寮では100人近くの入寮者が来る。大学職員では作業の人員が足りないため外部の派遣会社に依頼しているが、その予算はすでに決まっており、また寮の混乱を防ぐ観点からも、複数回入寮手続きを実施することは難しい」と主張する。
 さらに担当者は、「寮での事務手続きが面倒になるのも避けたい。4月入寮者と10月入寮者を一度に行うことで同じ書類で済ませられる」とも取材に答えた。

?個別の判断?で8月中旬以降に入寮も可 ただし「判断基準は言えない」
 
 7月3日付の学生支援課のホームページの告知には、「実習などで8月中旬以降に入寮しなければいけない場合は個別に対応する」と但し書きがある。
 柔軟な対応にも見えるが、一部の学部では、8月までに登校日が設けられている。そうしたことは、この但し書きには反映されていない。
実際、7月末に学科の登校日があるという工学部1年のCさんは、2限からのプログラムとなると広島県の実家からの日帰りは難しいことなどから、参加をあきらめたという。

 7月3日の告知の直後、部活・サークルは早ければ7月20日から活動が始まることが決まった。
 寮担当者は、「正式入部している1年生の課外活動への参加を理由とした早期の入寮は認められうる」というが、「現実的に入寮できるのは早くて8月18日以降。8月14日以前の入居については、入寮者の第2クォーターの試験期間と重なるため認めていない」という。

 「基本的には9月末入寮だ。それよりも早く入りたい学生には個別に対応している」ともいうが、あくまで「個別の判断」。
担当者は、「理解できる必然性のある事情ならOKだ」、「入居時期については個別の事情に応じて決めている」というにとどまり、判断基準は言えないとしている。

ホームページに載せるだけ 足りない告知の細やかさ

 北海道・沖縄など遠方在住ですでに航空券を取ってしまった学生などが4月に入寮したというが、前期試験で合格した工学部1年のCさんは、経済的な理由で応募し、3月末に入寮可能の通知がきた。当初、4月9日か10日に入寮予定だったが、直前の4月7日に大学ホームページを見て「入寮延期」と知り、広島からの新幹線のチケットをキャンセルするはめになった。

 後期試験で合格した工学部1年生のBさんは、大阪府南部に実家があるが通学時間が約2時間かかるため寮の入居に応募した。3月末から4月上旬に入寮許可の通知がきたが、その後、直接の連絡は全くなかった。9月下旬に入寮可能ということも、今回のニュースネットの取材で初めて知ったという。

取材を進めると、大学側の情報伝達のまずさが浮き彫りになる。入寮延期はやむを得ない部分があったとしても、入寮時期や条件などの情報をホームページにいきなり掲載するだけで、入寮者ひとりひとりにはメールなどの通知が一切なかった。
 そのため、個別に交渉した学生は入寮でき、そのほかの学生は取り残されるという不公平が生じている。

不安を抱える新入生に寄り添った大学事務を

 「緊急事態宣言が出たために入寮を禁止したはず。宣言が明けたのだから手続きを順次開始してもいいのでは」と、6月上旬のメディア研のアンケートに答えた、国際人間科学部男子学生のDさん。冒頭で紹介した抗議のツイッターには、共鳴のリツイートをしたという。
 3月末に入寮を決め、4月7日の緊急事態宣言が出て、ホームページで来ないようにとの指示を読んだ。以来、愛知県の実家に留まったままだ。
 学生支援課の担当者に7月13日にメールで問い合わせてみると、「サークル・部活関係(正式入部したため活動を始めたいという学生)以外であれば、9月18日以降の平日であれば個別の対応は可能」と返信が来た。

 学生支援課は、
1、 原則、9月29日、30日に入寮。
2、 早く入寮したい学生も、現実的には8月18日以降。個別に理由を聞いて対応する。
と取材に答えている。さらに、Dさんに対しては、「9月18日以降の平日に個別の対応は可能」と、「柔軟な対応」をみせている。

 7月になって感染者が増えている。第2波がやってきて移動制限という事態になれば、各地にとどまっている入寮予定者は、再び神戸へ移動するチャンスを失ってしまう。
コロナ禍の中では、臨時の予算獲得と、速やかな事務処理こそが柔軟な対応だろう。

 Dさんは、「とにかく9月29、30日の入寮は遅すぎる。入寮し2日間で荷物を片付けて(後期の授業に)通う準備をするのはきつすぎる」という。
万一、後期授業がオンラインという事態になったとしても、「入寮は9月を認めてほしい。もうこれ以上振り回されたくない」と憤りを隠せない。

 コロナ禍のなかで、授業開始日程や課外活動開始日、登校日の動きなど、これまでの学事日程は流動的にならざるをえなかった。
 そんななかで、コロナ禍で孤独にさらされている遠隔地の新入生がいる。
こんな混乱の中だからこそ、きめ細かな情報提供とスピーディーな対応が大切だ。
「フェア」で「学生ファースト」の入寮事務とは何か。学生支援課には、真の?支援?の視点とは何かが問われている。

関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

月別アーカイブ

サークル・部活総覧

  1. 神戸大のサークル・部活のツイッター・アカウントを探せるぞっ!クリックすると、『神大PORT…
  2.  神戸大学の文化系のサークル・部活(順不同)をジャンル別にリストアップしました。情報は随…
  3. 神戸大学のスポーツ系のサークル・部活(順不同)をジャンル別にリストアップしました。情報は随…
  4. 神戸大学の医学部のサークル・部活(順不同)をジャンル別にリストアップしました。情報は随時更…
ページ上部へ戻る