ジェンダーに関するガイドライン受け 歓迎の一方、運用方法がカギとの声も

 9月27日、神戸大サイトで「神戸大学における多様な性・ジェンダーに関する基本方針とガイドライン」が公開された。ガイドラインの作成は神戸大では今までにはなかった取り組み。学内の教員や学生はどのように受け止めたのか尋ねると、歓迎する声や、大学がより学生の声に耳を傾ける必要性を感じるという意見、ガイドラインをどう運用していくかが重要だとする意見が挙がった。<佐藤ちひろ>


(画像:うりぼーポータルのスクリーンショット。「通称名等の使用について」の項目が追加されている。)

 9月27日、神戸大サイトで「神戸大学における多様な性・ジェンダーに関する基本方針とガイドライン」(https://www.kobe-u.ac.jp/NEWS/sub_student/2022_09_27_01.html)が公開された。ガイドラインでは、カミングアウトへの対応方法や、同意なしに他人の特性を勝手に言いふらす、アウティング行為の禁止、だれでもトイレなどの全ての利用者に配慮した施設や設備の計画を進めるユニバーサルデザイン化の推進などが明記されている。通称名に関しても、所定の手続きを経たうえで使用可能であることが記載され、今までのような個別対応体制ではなくなった。

 神戸大では、2018年の学長によるダイバーシティ推進宣言(https://www.kobe-u.ac.jp/info/project/diversity/index.html)後、ジェンダーの多様性に関する、具体的な行動計画やガイドラインが公表されていなかったため、今回が初めての動きといえる。
国際文化学研究科での通称名の使用を実現した学生や、ガイドラインの作成を進めていた教員の受け止めを取材した。
 
学生や当事者の意見も聞いてほしい
 国際文化学研究科に所属する学生は、大学との交渉を経て、昨年度から通称名を使用している。ガイドラインが作成されたことに関しては、「神戸大学として性的マイノリティに対する具体的な方針が発表されたことを歓迎します。通称名使用の全学規則制定や支援の一覧化など当事者にとって使いやすいものになっています。研究科で通称名使用の前例を作ったことも少なからず寄与したと考えています。」と話す一方で、「もっとも残念なことは学生の意見が一切聴取されていないことです。学生から広く意見を集めるか、少なくとも現在通称名を使用している学生の意見は聞かれるべきでした。」と課題を述べた。
 学生は、学生証の写真変更や課外活動に関する記述がない点や、だれでもトイレなど、これから取り組むこともガイドラインに含まれている点が不十分だと感じているという。「現状、トイレは障がい者用と記載されていたり、男女別トイレの中に配置されていたりすることを知っていれば、もう少し別の書き方があったのではないか」と話す。
 「最初から完璧である必要はないですが、これからは学生や当事者の意見に耳を傾けて、対話してほしいです。それが本当のダイバーシティ&インクルージョンではないでしょうか。」と多くの人の意見を取り入れる必要性を示した。

留学生への配慮も必要
 今回のガイドラインの作成に関わったロニー・アレキサンダー名誉教授によると、ガイドラインは昨年から作成を進めていて、今年やっと形になったという。「神戸大学は、ダイバーシティ宣言以降とくに何もしていなかった」と今回初めてガイドラインが示されたことを評価する一方で、「やってみないとわからない部分もあるが、英語や中国語、韓国語で書かれたものを同時発行していないのは大問題。ダイバーシティを唱えているのに、ガイドライン自体が留学生に配慮できていない。」と指摘する。
 また、通称名の規則を作成する際にアレキサンダー名誉教授は、通称名使用停止の規則を作ってほしいと意見したという。「ジェンダーも性も変わるので、違うと思ったときに戻せる、戻ってよいということが重要だと思っている。希望すれば学位に戸籍上の氏名と通称名を併記できることはすごくいいと思った。」と話す。


(写真:取材に応えるアレキサンダー名誉教授。)

今後の課題はガイドラインの運用方法
 アレキサンダー名誉教授は、「ガイドラインができたことはとても大きいことで重要で、個人の学生が助かるかもしれないが、大学文化と社会の前提は変わらない。ガイドラインは、神戸大は安心だというメッセージ発信になる。しかし、本当にそうか。方針、ガイドラインがあるだけでは何も変わらない。(ガイドラインという)ツールはできたが、社会を変えるにはツールを手にいれてどうするかが重要。」と今後ガイドラインをどう生かしていくかが問われるとした。
 今後の課題として、「マイノリティの学生に対するマイクロ・アグレッション(相手を差別したり、傷つけたりする意図のあるなしにかかわらず、相手の心に影を落とすような言動や行動をしてしまうこと)はそう簡単にはなくならない。次はこれをなくしたいと考えている。」と話した。また、「性、ジェンダー、セクシャリティは変わるもの。自分がマジョリティだと思っていてもマジョリティでないかもしれない。」としたうえで、「様々なジェンダーの人がいることは怖いことではないと伝えたい。人間は防御的になって新しいものを怖がる癖がある。まずは教員がガイドラインの気持ちで学生に接すればよい。先生から異性の相手を前提とした結婚に関する発言などが減ればいいと思っている。性的マイノリティの人に対する配慮が当たり前になり、特別なものでなくなればよい」と展望を述べた。
 
 ガイドラインや通称名の使用要項は、うりぼーポータルトップページの「学生生活/学生支援」項目の「通称名等の使用について」(https://www.office.kobe-u.ac.jp/stdnt-kymsys/student/blue15/index_tsushoumei.html)から見ることができる。

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