法社会学高橋教授 「大学への放火は、知的財産の否定」

 神戸大では、昨年度に6件、今年度に入り6件と、原因不明の不審火が相次いでいる。法社会学を専門とする高橋裕教授(法学研究科)は、大学は紙の資料が多く、長い期間にわたって、紙によって知的財産を積み重ねている。その意味で、火をつける行為は、大学そのものの否定ともいえるのではないか」と語った。<ニュースネット取材班>

(写真:今年度で3回の不審火が報告された六2キャンパスにあるトイレ。2023年6月26日12時撮影。読者提供)

 高橋教授は、放火による損害について「法学的には、まず、燃やされた物自体への損害がある。今回のように大学の物に火をつけることは、大学の財産に損害を与えるものである。加えて、放火には『公共の危険』がある。火が燃え広がることで、周りの人や物にまで被害が拡大するおそれがある。また、社会学的には、人々の不安を引き起こす行為。『もっと大きな被害が出るのではないか』と、大学の関係者を不安に思わせる効果があると思う」と語った。

 また、「大学」における火の危険性について「大学は紙の資料が多く、長い期間にわたって、紙によって知的財産を積み重ねている。過去には、例えば、関東大震災によって東京大学(当時は帝国大学)の図書館が燃え、貴重な資料がなくなった。これは世界中にとっての大損害。その意味で、大学にとって『火』は非常に注意が必要なもの。火をつける行為は、大学そのものの否定ともいえるのではないか」とした。

 放火する人の特徴として「自己承認欲求があるのではないか。放火は目に見える行為。目に見えない悪口など『人にあたる』行為とは、目的に違いがあるかもしれない。周りの目を気にしているという点で、メッセージ性がある行為だとも思われる」。

 さらに、学生や教職員による事件の情報共有について「何か事件が起こったとき、それを誰かに知らせることは必要なこと。ただ、伝える場所によっては、責任を負うリスクもある。大学に伝える分には、不利益になるようなことはない。緊急の場合には、警察に通報してよいし、その通報で不利益になるようなことはない。一方で、SNSでの発信には注意が必要だ。仮に『こういう不審者を目撃しました』と発信して、それが誤情報だった場合、その発信については自分ひとりが責任を負わねばならないし、トラブルに巻き込まれる危険もある」とし、SNSによる安易な情報共有に警鐘を鳴らした。

●昨年1月から12件の不審火 消防「まずは119番、初期消火は絶対に無理をせず」=
https://kobe-u-newsnet.com/2023/07/10/%e6%98%a8%e5%b9%b41%e6%9c%88%e3%81%8b%e3%82%8912%e4%bb%b6%e3%81%ae%e4%b8%8d%e5%af%a9%e7%81%ab%e3%80%80%e5%a4%a7%e5%ad%a6%e3%81%ae%e5%af%be%e5%bf%9c%e3%81%a8%e6%b6%88%e9%98%b2%e3%81%ae%e8%a6%8b/
▽神戸大サイト「キャンパス内で事故・事件等が発生した場合」
= https://www.kobe-u.ac.jp/campuslife/life/manner/accident.html

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