神戸大学演劇部自由劇場の秋冬公演「フランダースの負け犬」が、12月8日、9日、10日の3日間にわたって行われた。劇団員は持ち前のハイテンション・ハイテンポな演劇を披露し、演劇関係者の観客からも絶賛を受けた。観客の中には、演者の個性あふれる熱演に魅了された人もいた。<川﨑成真>
(写真:公演内のワンシーン)
12月8日から3日間にわたり、鶴甲第1キャンパスのシアター300で神戸大学演劇部自由劇場の秋冬公演「フランダースの負け犬」が行われた。8人の演者と22人のスタッフの活躍で、100分間の公演を4部とも成功させた。自由劇場によると、3日間で約250人が訪れたといい、千秋楽となった10日の公演は満席だった。
「フランダースの負け犬」の舞台は第一次世界大戦前から大戦中にかけてのドイツ。主役である青年ヒュンケルが入隊した陸軍内での出来事を描く作品だ。ヒュンケルが同期や上司との関係に悩み、自分の保身と仲間の命との間で葛藤している背後で、『フランダースの犬』に対する解釈の違いから透けて見えるイデオロギーの対立をも描き出す。
劇中では、自由劇場持ち前のハイテンション・ハイテンポな進行が際立った。他大学の演劇部に所属しているという女性は「テンポがいいので公演の長さも気にならず、ずっと新鮮な刺激がある楽しい公演だった」と称賛した。
また、神戸大演劇研究会はちの巣座出身の学生(文・3)は「ビジュアルの良さと物語の丁寧さが両立されていて、バランスがいい公演だった」と舌を巻いた様子だった。
(写真:ハイテンションなギャグシーン)
好みのキャラクター・演者も観る人によってまちまちだったようだ。神戸大付属中学の演劇部に所属しているという中学生は、已己巳己さんが演じる主役の同期、クレーゼルがお気に入り。「硬派な態度と内面の優しさとのギャップが魅力的だった」と話した。今公演に息子がスタッフとして参加していたという母親は、西村けむりさんが演じる主役のヒュンケルの演技が良かったという。「(西村さんは)役になりきって熱演している。彼のファンです」と熱弁した。一方、そのスタッフの父親は「(主役の同期の)バラック(を演じた馬の骨さん)は最初女の子かと思っていたが、声を聞いたら男でびっくりした」と、その衝撃を語った。そのほか、主役の上司であるクルック将軍(デヴィン・カミンさん)やビューロー将軍(三浦の厚焼きさん)を推す声もあった。
(写真:演者らは個性豊かなキャラクターを演じた)
主役ヒュンケルを演じた西村けむりさん(文・2)は、自らヒュンケルの演者を買って出たという。「公演を通してずっと出演する役なので、喉の調節が大変だった。ラストシーンをどう見せるか、ということを考えるのにも苦労した」と語った。また、「テンポが速い演劇では早口になって何を言っているのか分からなくなることがよくあるので、速いかつ丁寧(な演技)を心がけた」と自由劇場の団員特有のこだわりも見せた。
今公演で統括のような役割を担った吉田考則さん(工・2)は、「(劇団内の)他の部署と衝突することもあったが、最終的には自分の意見を受け入れてくれて、それをどう良くしていくかまで考えてくれた。感謝しています」と満足げな様子で語った。
(写真:主役を演じる西村けむりさん)
自由劇場によると、次回は3月初週の卒業公演を予定しているとのこと。続報は自由劇場のXやInstagramを要確認だ。
▽自由劇場公式X
▽自由劇場公式Instagram
=https://www.instagram.com/jigeki_official/
了
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